新型コロナでの景気悪化を理由にした内定取消はできる?
問題は、
今回のような新型コロナを原因にした景気悪化を理由に内定取消ができるか、どうかです。
こうした社会の景気悪化によって、内定取消が増えたという経験は、
私たちは近いところで2回あります。
1回は、リーマンショックの時、もう1回は東日本大震災の時です。
このような場合、まず考え方として、景気悪化による内定取消は、
内定者側には全く非がない事情による内定取消である、ということです。
この場合、
内定者側には責任がないので、内定を取り消すにしても、相当に高度な内定取消理由が求められます。
そもそも、会社が行う人員の採用は、計画的になされるもので、やみくもに採用しているわけではありません。
もし、やみくもに採用している企業があれば、それは企業側の責任となり、その責任を内定者に押し付けることは
不合理であることになります。
特に、
今回の新型コロナを理由にした景気の悪化は、まだ始まったばかりで、どのような見通しになるのか、
確定的なことは言えない段階です。
業種、業態などによっても影響は異なりますし、どのくらいの期間、この影響が続くのかも不透明です。
また、今後の国の施策によって持ち直す可能性もあるでしょう。
このような不確定要素が大きいところで、安易に内定を取り消すことは、果たして有効となるかは、大きな疑問があります。
もちろん、
どうしようもないくらいに経営に打撃を受けている会社では、有効な内定取消もあるかもしれません。
しかし、新型コロナの影響といっても、基本的にはここ数か月のことが問題となっているわけですので、
会社側に「見通しも暗いし、まだ内定段階だからこの人を切ってしまえ」という考えがないとはいえません。
会社側には、安易な内定取消をしないことが求められます。
もしトラブルになれば、それ自体で大きなコストがかかることがあります。
また、労働者(内定者)側も、内定を取り消されても、それが無効になることがあるという点を知っておく必要があります。