仕事と生活の調和推進のための調査研究
~育児や介護による生活の変化が働き方等へ与える影響についての意識・実態調査~
内閣府男女共同参画局推進課
内閣府では、仕事と生活の調和推進のための調査研究を毎年行っています。
令和元年度は、育児または介護を行っている男女に対し、夫婦間の育児や介護の分担等の生活状況や職場や行政の制度に対する評価を調査し、性別・年代別、就業形態別の傾向を明らかにしました。(1)個人・家庭、(2)職場、(3)社会・行政の3つの観点に分け、両立に影響を与えている要素をご紹介します。
1.「育児」と仕事との両立に与える影響
(1)個人・家庭
同一世帯の夫婦で育児の分担割合について「ほぼ半々に分担している」と回答した女性は男性の半数以下であり、夫婦間に認識の差がありました。一方、分担について会話をしている夫婦ほど「配偶者やパートナーとほぼ半々に育児を分担できている」、「育児が生き方に良い影響を与えている」と答えています(図表1)。また、20-39歳の若年層正社員の女性では、夫婦は対等であるべき、育児分担も半々にすべきと考えていますが、実際は、夫より自身に負担が偏っていると答えています。
(2)職場
男性は、育児と仕事の両立が困難な理由として、「職場に両立中の男性が不在である」、「職場での理解が得られにくい」、「労働時間が長い」ことを挙げています。休暇の在り方としては、男女ともに時間単位・半日単位休暇等、有給休暇を柔軟に取得できる環境が育児との両立に有効と回答しています。
育児分担が、夫より自分(妻)に偏っていると感じている正社員の女性の多くが、「育児休業(休暇)後に疲れやすくなった」と答えており、育児世帯への精神的なサポートや夫婦の役割分担の再考が求められます。
(3)社会・行政
育児をする上での心のよりどころとして、家族・親族をあげる人が多い一方、勤務先や地域をよりどころとしていると回答する人は少ないことがわかりました。社会全体として育児を支える体制づくりが不足していることから、育児は個人で解決すべきものであるとの認識に繋がっているのではないかと考えられます。また育児を前向きに捉えている人ほど、友人など、家族・親族以外にも心のよりどころとなる方がいると回答していることも注目に値します。
2.「介護」と仕事との両立に与える影響
(1)個人・家庭
介護との両立においても、夫婦・パートナーおよび親族との分担状況について、男性より女性の負担感が強いことが分かりました。なお、分担についての会話が多い夫婦ほど、妻への分担の偏りが少なく、育児と同じ傾向がみられました(図表2)。
また、若年層でも家族の一員として間接的に介護に関与している人に加え、メインケアラーが一定数いることが、明らかになりました。
(2)職場
介護との両立においては、関係者との調整のため、または予期せぬ事態への対応のため、「時間単位・半日単位等、有給休暇の柔軟な取得が効果的」と多くの方が回答しています。
(3)社会・行政
介護者にとって、身近なケアマネジャーやホームヘルパー等の専門家による相談等の支援、または施設などの介護サービスの積極的な活用が就業継続に大きく役立っています。
なお、50代後半の男性においては、他世代と比較して、介護に関する相談相手が少なく、介護サービスの利用方法が分からないと答える人が多いこともわかりました。また、両立の具体的な相談相手がいないと答えた人の割合は若い世代の男性で高くなっており、特に若い男性介護者が孤立していることも明らかになりました。このことから、男性や若年層に対する地域での相談や支援体制の更なる強化が求められます。