ウェブ面接、人事はみている 「カンペばれてますよ」
2021年4月入社の新卒に向けた企業の採用活動は大幅な軌道修正を余儀なくされた。活動が本格化する時期である20年3~6月に新型コロナウイルス禍が重なったからだ。代表的なものが対面の代わりに実施したウェブでの説明会や面接だ。ディスコが5月に1122社へ実施した調査でも、約8割の企業が導入していた。
ただ、初めてのことには混乱がつきもの。採用の現場では何が起きていたのか。IT(情報技術)企業の採用活動を支援するIT産業懇話会(東京・豊島)の協力を得て、27社の人事担当者の声を集めた。みえてきたのは、対面の活動とは様子が大きく異なることだらけの実態だった。
何人もの人事担当者が触れていたのが「カンペ(カンニングペーパー)」の存在だ。志望理由や学生時代に力を入れたことなど、面接で話す内容をテキストで打っておいてパソコン画面に表示させたり、印刷してその紙を見えないように手元に置いて話したりする行為を指す。リアル面接ではまずあり得ないが、ウェブ面接だと簡単にできてしまう。
コロナ禍のために説明会で若手社員と話したり、インターンシップで会社の中に入ったりができず、企業研究が進まなかったからカンペに頼ろうとするのかもしれない。もちろんカンペに対する人事担当者の目は厳しい。
「目線の動きでカンペを読んでいるのはバレバレ」と就活生の不自然な動きを見抜いているようだ。結果として「悪い印象になる」とする人が多く、「カンペを読んでいる、イコール会社研究をしていないと伝わり不合格にする」という厳しい意見もあった。
■カメラオフの人「スルーします」
ウェブ面接は「場所が自宅なので、リラックスして面接に臨んでいる就活生が多かった」という好意的な意見がある一方で、リラックスというにはあまりに油断がすぎる就活生もいたようだ。ウェブ面接で背景として映り込む自分の部屋の様子である。
「背景に映っているものが気になって面接に集中できない」という意見はまだいいほうだ。「あまりに部屋が散らかっており、TPO(時、場所、機会)をわきまえていないのかと思った」「趣味のものが背景に映り込むのはまだいいが、散らかっているのは困る」と厳しい見方をする担当者が多かった。
意外だったのは、多人数がアクセスするウェブ説明会での就活生のふるまいだ。何人もの人事担当者が、カメラをオフにしたり音声をミュートにしたりする就活生を「スルーします」など、否定的にとらえていた。発声ではなくチャットで質問する就活生に違和感を覚える担当者もいた。
人事担当者からすれば自社に興味がないのかと邪推してしまうのかもしれない。ただ面接ならまだしも、説明会の場でカメラオフやミュートが必ずしも悪いとも言えない。説明会をオンラインで実施する際のマナーについては議論の余地があるだろう。
かつて採用選考における紙の筆記試験がウェブテストに変わった際も、友人による替え玉受験が横行した。企業は対策としてテストセンターといった外部の会場で就活生の本人確認をした上でウェブテストを受けてもらうようにするなど、対策が進んだ。
ウェブでの説明会や面接も進め方や受け方のノウハウがたまって、少しずつ企業と就活生が互いにスムーズにやり取りできるようになっていくのだろう。