【福岡・北九州市】セルフ・キャリアドックの概念と導入のメリットとは?
「セルフ・キャリアドック」とは、企業の人材育成ビジョンに基づいて、社員の主体的なキャリア形成を促進し、支援することを目的とした、定期的かつ体系的なキャリアコンサルティングの実施等からなる総合的な取り組みをいいます。セルフ・キャリアドックの導入によって、以下のようなメリットが挙げられます。
セルフ・キャリアドックの導入によるメリット
- 労働者の仕事に対する主体性をアップさせる
- 労働者自らが、キャリア・プランを考えることにより、主体的に仕事や職業能力開発に取り組もうという意識を高める
- 労働者の適性、職業能力などへの自己理解を深めることができる。それにより、自分なりに工夫して仕事や能力開発にも積極的に取り組もうとする意欲が出る
- 社内での昇進に必要な事柄は何なのかをイメージしやすくなり、仕事へのやりがいや向上心を高める
- 新規採用職員の定着のための支援、育児休業者などの復帰も支援しやすくなる
- キャリアコンサルティングを実施することにより、新規採用職員などのキャリア・プランを明確化、具体化でき、職場の定着や仕事への意欲向上を高める
- 育児休業者、介護休業者などの職場復帰をスムーズに行うことが可能になる
- 助成金が出るため、セルフ・キャリアドック制度の導入、キャリアコンサルティングの実施に必要な経費の負担も軽減できる
セルフ・キャリアドックの①受給要件と受給額は?
人材開発支援助成金(制度導入助成)は、事業主・事業主団体等が継続して人材育成に取り組むため、所定の人材育成制度を新たに導入し、その制度に基づいて被保険者に実施した場合に一定額が助成されます。
助成額は47.5万円とされており、生産性要件を満たす場合は60万円となります。また、受給するには一定の条件を満たす必要があり、以下のいずれかに該当する事業主・事業主団体等は、助成金の受給はできません。
助成金の受給ができない事業主・事業団体等
- 不正受給を行ってから3年以内に支給申請した。または、支給申請日後および支給決定日までに不正受給をした場合・支給申請をした年度の前年度より前、いずれかの保険年度の労働保険料を納入していない(ただし、支給申請の翌日から起算して2ヶ月以内に納入を行った場合を除く)
- 助成金の支給、不支給の決定に係る審査に必要な管轄労働局長が認める書類等を、管轄する労働局長の求めに応じて提出、提示しない。または管轄労働局の実地調査、審査に協力しない
- 助成金の支給、不支給の決定に係る審査に必要な書類等の整備と保管をしていない
- 支給申請日の前日の過去1年の間に、労働関係法令の違反を行った
- 性風俗関連営業、接待ありの飲食等営業、これらの営業の一部を受託する営業を行っている
- 暴力団関係事業所の事業主及び事業主団体等
- 支給申請日または支給決定日の時点で倒産している
- 助成金の不正受給が発覚したときに事業主及び事業主団体名等の公表について同意しない
- 制度導入・適用計画届提出日、支給申請日および支給決定日の時点で雇用保険適用事業所ではない事業所
※詳細および最新の要件は厚生労働省の「人材開発支援助成金制度導入活用マニュアル」を確認してください。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000163998.pdf
助成金の活用②制度導入から適用までの流れは?
セルフ・キャリアドックの制度導入は以下の手順で進めます。
セルフ・キャリアドック制度導入の手順
- セルフ・キャリアドック制度の作成セルフ・キャリアドック制度を規定した就業規則または労働協約の案である、「セルフ・キャリアドック実施計画書」を作成しましょう(この制度はキャリアコンサルタントと共同して作成する必要があります)
- 制度導入と適用計画届を提出するセルフ・キャリアドック制度を盛り込んだ制度導入と適用計画届を労働局(一部ハローワーク)へ提出します
- 制度導入と適用計画届の認定を受ける管轄労働局長によって、制度導入と適用計画届の認定がなされます
- 制度の導入がスタートセルフ・キャリアドック制度を規定した就業規則または労働協約の届出と締結後、当該就業規則または労働協約およびセルフ・キャリアドック実施計画書を労働者へ周知させる必要があります
- 制度の実施キャリアコンサルタントによる実施計画書に基づいたキャリアコンサルティングの実施が始まります。それに伴い、キャリアコンサルティングに基づき労働者がジョブ・カード作成を開始します
なお、支給申請期間も決められており、最低適用人数を満たす者の制度を実施した翌日から起算します。そして、6ヶ月間経過した日から2ヶ月以内に申請をします。(2017年4月24日時点)
次に、制度適用までの流れは以下のようになります。
セルフ・キャリアドック制度適用までの流れ
- 労働者によるジョブ・カード作成のための事前準備キャリアコンサルティングを実施する前に、これまでの職業経験や学習・訓練歴などを振り返って、将来に向けた希望や目標などを考えながらジョブ・カードに必要な事項を記入します
- キャリアコンサルティングの実施労働者の作成したジョブ・カードを活用しながら行います
- 労働者によるジョブ・カードの完成キャリアコンサルタントが、ジョブ・カードのキャリア・プランシートに必要なコメント等を記入します。ジョブ・カードの記入が終わり、労働者に返却をしたら最終的に労働者がジョブ・カードを完成させます
このジョブ・カードは労働者本人が管理するものであり、キャリアコンサルタントがコピーを保管する、企業の人事担当者などにジョブ・ カードを渡す、見せることなどはできません。
助成金の活用③コンサルティングの流れと時機は?
キャリアコンサルティングの実施は以下のような流れで行い、労働者をサポートします。
キャリアコンサルティング実施の流れ
- 自分自身をきちんと理解させる労働者の興味、適性、能力などを明確化と職務経験の棚卸しなどをします
- 仕事およびキャリア・ルートの種類や内容を理解させる職務を遂行するのに必要と思われる職業能力や、キャリア・ルートの情報提供を行います
- 最終的な意思決定をする前にまず体験させる啓発的体験に必要な情報提供などを行います
- 意思が固まれば、キャリア・プランを作成する労働者に対して、目標設定とキャリア・プランの作成支援などを行います
- キャリア・プランに基づいて、仕事と能力開発に実際に取り組む労働者の仕事および能力開発の進捗状況を把握し、必要な情報提供などをします
そして、コンサルティングを実施する時機としては、以下のように効果的な時機で検討することがすすめられています。
コンサルティングを実施する時機
- 毎年決まった月に実施する
- 新規採用直後に実施し、以後2年ごとや3年ごとに実施する
- 人事異動などに併せて実施する
- 教育訓練やキャリア形成などの研修と併せて実施する
まとめ
キャリア開発の支援のための新しい取り組み、「セルフ・キャリアドック」について、ご紹介しました。実施することで助成金が支給されるというのも、企業としては見逃せません。
そして、キャリアコンサルティング等を組織内で体系的・定期的に行うことにより、労働者が働きやすくなり、仕事の効率もあがります。労働者のキャリア向上、意欲の向上にもつながっていくことでしょう。