2.キャリア開発の現状
では、企業におけるキャリア開発の状況は、具体的にはどのようになっているのでしょうか。労務行政研究所が行った「企業におけるキャリア開発支援の実態」(2016年)をもとに、分析していきます。
キャリア研修の導入状況
次に、「階層別キャリア研修」を実施している企業が、どの層に対する支援が重要だと認識しているのかを見ていきます。最も多かったのは「中堅社員(30歳以上で管理職手前)」で、90.9%。次いで、「若手社員(30歳未満)」(81.8%)、「ライン管理職」(74.0%)、「女性社員」(55.8%)と続きます。キャリア開発支援の対象
最も多かった「中堅社員」は、将来的に管理職にするのか専門職とするのかを見極めていくステージにあります。
キャリア開発を考える意味で、非常に重要な時期であることから、実施率が高くなっていると考えられます。
次の「若手社員」は近年、早期退職が問題となっています。若いうちに、いかにしてライフキャリアや職業キャリアを考えさせるかがキャリア開発上、大きなテーマとなっているため、高い実施率となっているようです。
また、「ライン管理職」は、次世代の経営幹部としての期待が高まる層。経営的な観点からも、この層に対するキャリア開発の重要性は当然のことと言えるでしょう。

キャリア開発支援制度の理解・浸透度(関与の度合い)
2016年4月1日に施行された「改正職業能力開発促進法」により、キャリアコンサルタントが国家資格となりました。また厚生労働省より「名称独占権」が付与され、企業内ではキャリアコンサルタントがキャリア開発支援を行うことが確立。これにより、同法に規定されたキャリアコンサルタントでない者は、キャリアコンサルタントまたは似たようなまぎらわしい名称(キャリアコンサルなど)を用いることができなくなりました。キャリアコンサルタントの配置・委託状況
近年、働く人を取り巻く環境は非常にストレスフルになり、キャリア支援の重要性が高まっています。そこで、厚生労働省は働く人のキャリアを支援する専門家として、キャリアコンサルタントの養成数を大幅に拡大する方針を進めています。キャリア不安を抱えないようキャリアコンサルタントが支援することが、何よりもメンタルヘルスの予防へとつながると考えているからです。
ところが、企業ではキャリアコンサルタントが養成されているとは言えない状況です。「社内に専任のキャリアコンサルタントがいる」という企業は20.0%に過ぎません。キャリア開発のニーズが高まっている中、今後はキャリアコンサルタントの早急な養成が期待されます。

26.7 | ほとんど社外のキャリアコンサルタントに委託している |
一部社外のキャリアコンサルタントに委託している | 13.3 |
社内に他業務と兼任のキャリアコンサルタントがいる | 46.7 |
社内に専任のキャリアコンサルタントがいる | 20.0 |