【福岡/中小企業支援アドバイザー】菅氏、中小企業の再編促す 競争力強化へ法改正検討
新型コロナウイルス禍でマスクや医療機器などの供給が困難になった経験を踏まえ、中国依存を念頭に生産拠点の分散を進めると語った。「国民生活に必要なものが不足したり、部品がなくて工場が稼働できなかったりした事例があった。見直すべきだ」と主張した。
「経済産業省が用意した生産拠点の移転を促す補助金は募集枠をはるかに上回る応募があった」とも述べ、予算額の追加を検討すると述べた。
中小企業については「足腰を強くしないと立ちゆかなくなってしまう」と訴えた。
日本の中小企業は現在、小規模事業者を含め約358万社あり、企業全体の99.7%を占める。
中小企業白書によると従業員1人あたりの付加価値額を示す「労働生産性」の中央値は大企業の585万円に比べ、中規模企業は326万円、小規模企業は174万円にとどまる。企業規模が小さくなればなるほど生産性が下がる傾向がある。
日本生産性本部の調べでは日本の労働生産性は主要7カ国(G7)中、最も低く、米国と比べると約6割の水準にとどまる。経済協力開発機構(OECD)加盟国36カ国中でも21位と低迷する。中小企業の低生産性が日本経済の効率化の足かせとなっているといえる。
少子高齢化により労働力はこの先、急速に低下する見通しだ。中小をテコ入れしなければ「地方の再生」といった目標も実現が難しくなる。
菅氏は「中小の再編を必要であればできるような形にしたい」と語る。合併などで企業規模を大きくすれば経営の効率化や生産性の向上、研究開発や投資の拡大などが図りやすくなる。一方、中小企業であることで税制優遇や補助金などが受けやすい面もある。
中小企業基本法は資本金または従業員数で大企業か中小かを区別する。従業員で見ると製造業は300人以下、卸売業・サービス業は100人以下、小売業は50人以下がそれぞれ中小に分類される。中小への手厚い優遇措置を受けるためあえて資本金や従業員数を増やさない例もあった。
菅氏は小規模の利点を生んでいた同法の区分要件の改正を念頭に置く。従業員数の引き上げや資本金の撤廃などが選択肢になる。
菅氏は2日、地域金融機関に関し「地方の銀行について、将来的には数が多すぎるのではないか」と述べた。地銀は護送船団方式によって守られてきた。異次元金融緩和による利ざやの低下で経営環境の悪化が進んだ。
菅氏は合併や再編を通じた経営体力の強化を促す。地銀の経営統合を独占禁止法の適用除外とする特例法を活用し従来難しかった同一県内の合併も認める方向だ。
菅氏はインタビューで携帯電話料金について「国民の財産である電波の提供を受けているのに、大手3社で寡占状況をつくってはならない」と主張した。大容量プラン引き下げの必要性を訴え、携帯大手3社に改めて値下げを求めた。
菅氏は国の基本理念に「自助・共助・公助」を掲げる。「自分でできることはまず自分でやる。地域や自治体が助け合い、その上で政府が責任をもって対応する」と説明した。
7年8カ月続いた安倍政権の経済政策は金融緩和と積極財政に傾斜した。菅氏はアベノミクスを継承する方針だが「自助・共助・公助」の実現に向けて、規制改革といった分野にも政策軸を広げる可能性がある。