人事とキャリアコンサルタントとの協業を、なぜ促進する必要があるのか?-2
キャリア支援で実現する組織の活性化・変革・成長
現在のキャリアコンサルタントの業務の中核は、法律上は「能力開発に際しての相談・助言・指導」とされている。かなり大まかな定義だが、その具体的な内容を明らかにしている、指針化された報告書がある。厚生労働省がまとめた「セルフ・キャリアドック」だ。この「セルフ・キャリアドック」の取りまとめに、座長として中心的な役割を果たしたのも花田氏である。
「セルフ・キャリアドック」は、人事のキャリア支援に対してもさまざまな提起を行っている。たとえば、就業規則内に職業生活設計の支援責任を組み込むこと、職業能力開発推進者を選任することなどだ。とりわけ「職業能力開発推進者」については、極めて重要なポイントがあると花田氏は語る。
「職業能力開発推進者は、文字通り職業能力開発のための計画を定めて推進する責任者です。これまでは教育研修部門の責任者、または労務・人事・総務などの責任者が兼任するのが一般的でした。しかし、2019年4月に大きく変わりました。キャリアコンサルタントとしての能力を持つ者の中から選任することになったのです。もし、社内にそういう人材がいない場合は、教育や人事の責任者がその資格を取得することが必要となってきました」
さらに、キャリアコンサルタント/職業能力開発推進者には、その役割を果たすためのより積極的な動きも求められる。
「もし、社内にキャリア開発や職業設計を阻害するような組織的要因がある場合は、それを取り除くよう経営や人事に提言することが求められます。従来なら人事の仕事だったかもしれませんが、『セルフ・キャリアドック』ではキャリアコンサルタントの仕事となりました。対個人の支援だけでなく、組織への介入もその職務領域に含まれるようになったのです」
こうした新たなキャリアコンサルタントの役割を整理したものが「花田モデル」だ。同モデルでは、キャリアコンサルタントが担うべきキャリア支援を、1次~7次支援の各段階に分類して解説している。
「特に重要なのが、組織の活性化、組織の変革・成長を目的とした6次・7次支援です。具体的には、『パフォーマンス開発』や『MBOS』の運用、あるいは『個人の元気』をKPI化して組織活性化につなげていくなど、まさに人事とキャリアコンサルタントが一体となって仕組みをつくっていく活動です。さらに、組織の変革・成長に関わる場合、職業能力開発推進者はチーフキャリアオフィサー(CCO)として、チェンジエージェントの役割も担うことになります」
こうしたキャリアコンサルタントの役割拡大に伴い、キャリアコンサルタント養成機関に対しても、そのカリキュラムに「職業能力開発推進者の業務にも対応できる知識・能力を習得する課程」を組み込むことが義務づけられるようになっている。