人事とキャリアコンサルタントとの協業を、なぜ促進する必要があるのか?-3
経営的視点でのキャリア支援を定める「セルフ・キャリアドック」
「セルフ・キャリアドック」は、他にもキャリア支援の活動を効果的なものとするさまざまな協業のケースに触れている。
役職定年を迎えた人や、ポスト不足でなかなか管理職になれない中間層のケア。個人の能力開発の状況を一種のカルテやデータベースとして作成し、保管しておくこと。キャリア自律に向けた組織風土の分析。個人のキャリアを職場(上司、同僚)でサポートする新組織開発。上司によるキャリア面談のサポート。主体的な現場での能力向上を行う新OJTによる能力開発。360度フィードバックを活用しての個人の能力開発など、非常に幅広い分野が対象となる。
「これらは従来、人事が行っていた業務ではありますが、『セルフ・キャリアドック』ではキャリアコンサルタントにも協業して推進することを求めています。守秘義務のある悩み相談やカウンセリングの中身を共有するという話ではありません。従業員が職業設計や能力開発を十分に行えているか、そのネックになるような要因が組織内にあるのかどうか、あるとしたらその検証や改善に関する調査・報告・提案・調整などを行い、制度構築や運営、フォローまでを人事と連携しながらやっていく、という趣旨なのです」
さらに、こうした取り組みは、最終的に組織の責任者、つまり経営者がコミットメントとすべき課題として改正された職業能力開発促進法に明記されていると花田氏は強調する。
「職業能力開発推進者は、全体報告を最低でも年1回、できれば四半期に1回程度のペースで行うべきです。そして、能力開発に関わる問題点をまとめて、その改善を経営に対して求めていく。キャリア支援を経営問題として位置づけるには、そのくらいの頻度が必要です。守秘義務のある情報は別として、組織全体で課題を共有し、その解決に取り組むことが重要です。そのためにも、まずは個々人のキャリア開発の状況を記録したデータベースをしっかりつくることが大事です」
また、今後は企業の研修体系の中に階層別研修・職能別研修と並んで「キャリアデザイン研修」を組み込むことが必然だという。
「キャリアデザイン研修では、個人のキャリア目標、キャリア方針、アクションプランなどを明確化し、どう実践するかを計画します。さらにそれを面談でフォローしていきます。そういった進め方なども『セルフ・キャリアドック』に書かれていますので、ぜひ厚生労働省のウェブサイトからダウンロードして参考にしてみてください。人事とキャリアコンサルタントの協業といわれても、すぐにはピンとこないという場合も、まずそこにある協業のモデルケースをきっかけにしていただけるといいのではないでしょうか」