【福岡/働き方キャリア相談】「互聴」によるコミュニケーションが面談の質を向上させる
社内では多くの面談が行われているが、質の高い内容となっているだろうか。「目標管理の面談」「キャリア面談」などの制度があっても、上司によってその質に大きな差があるのが実状だ。胸襟を開いて上司と部下が話し合い、双方が納得のいく意味ある面談を行うには、どうすればいいのか。面談の質は、部下のキャリア開発やモチベーション向上にも影響し、組織活性化の鍵をも握っている。「互聴」(互いに聴き合う関係性)によるコミュニケーションの重要性を、臨床心理士でありキャリアカウンセラーである宮城まり子氏が語った。
一方的な面談ではなく「互聴」が大切
人事評価面談やキャリア面談など、面談はあらゆる組織で日々行われている。近年は「1on1」が流行するなど、上司と部下との対話の重要性がますます注目されている。しかし、「聴く」という行為は、それほど簡単なものではない。上司は本当に部下の話を聴けているのか。部下は上司に言いたいことを言えているのか。
宮城氏はまず、「互聴(ごちょう)」というキーワードを挙げた。互聴とは文字通り、どちらか一方が聞き役・話し役になるのではなく、互いに聴き合うということだ。当たり前のように聞こえるかもしれないが、面談を相互に「言いたいことを伝える場」であると同時に、互いに「思いを聴きあう場」と捉えている管理職は少なくないという。
そもそもなぜ上司と部下の面談は必要なのか。宮城氏は面談の意味を、七つの言葉で定義した。
1、1対1のコミュニケーションの場
2、「互聴」による対話 - 相互理解を深める場
3、質問をし、内省させ、気付きを与える場 部下が自分を語る ― 部下のための時間
4、動機付け、さらなる成長を図る ― 人材育成の場
5、課題を整理し、自律的行動を促す場
6、今後のキャリアを考えさせ、準備を促す場
7、信頼関係を形成し、絆を強化する場
「五番目に挙げた『課題を整理し、自律的行動を促す』というのは、部下だけに向けられたものではなく、上司も含めて互いの課題を整理し合うということです。面談の質は、関係性の質と深い関わりがあります。また、事前にどれだけ準備をしたかで、面談の質の良し悪しが決まります」 事前の準備とは、次のようなものだ。まず、日頃からコミュニケーションの量を確保できているか。「量より質」という考え方もあるが、宮城氏は「量が担保されないことには、質は磨かれない」という。普段から話していない相手に、いざというとき本音で話せるかというと、なかなか難しい。その他に、日ごろからありのままを話せる心理的安全性のある関係性を築けているか、部下の育成を自分の大切な責任・役割と捉えているか、といった準備が必要だという。
面談の準備というと、以前の面談シートを見返すなどの直接的なものを想像しがちだが、宮城氏がここで言う準備とは「日ごろの信頼関係」のこと。信頼関係を築くため、上司に求められるものは傾聴の姿勢。まずは部下に関心を持ち、観察する。観察した上で気付いた点があれば、面談で生かすためにメモしておくことを宮城氏は薦める。そして上司から声をかけ、その後自分は聴く側に回ること。待っているだけでは、部下は話してこない。 「以前カウンセリングをした管理職の方が、こんなことをおっしゃっていました。職場で誰に声をかけたか、毎日星取り表をつけているのだと。すると『Aさんには頻繁に声をかけているが、Bさんにはあまり声をかけていない』など、いかに自分のコミュニケーションが偏っていたかに気付いたのだそうです。素晴らしい取り組みだと思いました」