【福岡/働き方キャリア相談】これまでの日本人の学びにおける「五つの問題点」
変化が激しい時代と言われるが、実際に現場ではさまざまな変化が起きている。例えば、テクノロジーを含む経営環境の変化が起こり、ビジネスモデルに革新をもたらした。今後は、AIに代替されてなくなる仕事や、要件が変化する仕事が多数出るとも言われている。ただし、それはごく一部の話である。。
「同時に、今までなかったような新しい仕事も登場します。ただし、『そういった変化が、いつ・どこで・どのぐらいのスピードで起こるのか』『この仕事はいつなくなるのか』『どんな仕事がいつ生まれるのか』まではわかりません。変化は確かに起こりますが、確かな予測は不可能です。例えば、EV化によって内燃機関が不要になると言われてきました。しかし、いつどのぐらいの規模でどこまでなくなるのか、じわじわと残っていくのかはわかりません。自動車業界における四つの次世代トレンドといわれるCASEの進展も、何らかの影響を及ぼすはずです」
これまでのような、内燃機関が差別化の基本だった時代には、「すり合わせ型」の仕事や組織の形が、効果やクオリティーを生んでいた。しかし今後は、「組み合わせ型」のオープンソース的な部分が重要になってくると考えられる。内部取引費用の軽減よりも、外部機会の取り込みの必要性が高まり、外向きでアンテナの高い多様な人たちの活躍が求められるようになるからだ。そうすると均質で内向き求心力のある組織から、多様性のある外の機会獲得を重視する組織への変化が起こる。
「さらに、学び方も変化することになります。過去の産業化社会が目指してきたような、緻密に計画を立案して着実に実行するというタイプの進め方では通用しにくくなくなるのです。すると、日本人のこれまでの学び方では問題があるので、今後は見直していかなければならない。問題の一つ目は“安心社会型”の学びです。内部のタテ型伝承に偏った、タテ型OJTとも言えます。これまで先輩や上司が、後輩や部下を指導していくことで、日本組織の強みをつくり上げてきました。ところが、今後はそれが弱みになってしまう。自己啓発が弱く、外から刺激を受けたり学んだりしない傾向が強いので、イノベーションも起きにくくなると予想されるからです」
二つ目の問題は「タテ社会型」の学びだ。会社というタテ社会に大きく依存し、タテ関係の中においては学ぶが、外のプロフェッショナルとは交流しない、学び合わないという特徴がある。変化の激しい時代には、社内で得た学びは時代遅れとなっていて、外の動きや新しい動きについていけなくなるかもしれない。タテの枠を超えて、外に出て、同じような仕事をしている人たち同士による、ヨコでの学び合いが必要になる。
「三つ目の問題は“詰め込み型”の学びです。日本の学校教育の影響が多分にあると思いますが、丸暗記型の試験対策に慣らされてきたために、深く学ばない、学びを面白がらない、学びの意味を考えない、といった傾向が強い。学びが身に付きにくく、変化に対する応用力にも欠けます。すると、四つ目の問題である“正解主義的”な学びにも陥ってしまうわけです。正解だけをただ求めるために、自ら考えて試行錯誤するのは時間のムダと考えてしまう。持論を形成する習慣がつきにくくなり、正解のない仕事に対処できなくなるのは明らかです。五つ目の問題は“独学に慣れていない”という問題。先生から教えてもらうことを待っているだけで、独学をしながらヨコと共有し学んでいくという刺激的な学び方が不足しています。これら五つの問題に着目し、学びをどう変えていくのかを考えなければなりません」