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【働き方キャリア相談】 ジョブ型雇用と日本社会-2

【福岡/北九州/働き方キャリア相談】 ジョブ型雇用と日本社会-2

職務記述書が広く用いられているのは派遣労働だろう。現行の法制度では、派遣労働契約に派遣労働者が従事する業務内容をできるだけ詳細に明示する必要がある。厚生労働省の例示をみる限り、ある程度の詳細さで業務内容が限定されており、職務記述書を運用する際の参考になるだろう。派遣労働者の業務内容がどの程度変更されているかを検討することで、職務記述書を導入した場合の内容改定の柔軟さについて示唆が得られるかもしれない。

もっとも、管見の限りでは業務内容の改定について直接把握しているのは、東京都産業労働局が実施している「派遣労働に関する実態調査」に限られる。

調査では登録型派遣労働者に「ここ3年間に派遣契約の途中で仕事の変更や、打ち切りはありましたか」と聞き、肯定した回答者は2018年調査で434人中42人(9.7%)だった。打ち切りも含めての調査結果だが、中途での業務内容の変更はそれほど頻繁ではないようだ。契約改定が困難なことを見越して派遣先が限定された以外の業務を任せようとしなかった可能性も考慮すると、業務を契約で限定した場合、その内容を変更するのは現状では容易でない可能性が高い。

成果給については、派遣労働者に賞与や一時金が支払われにくいことは同一労働同一賃金の文脈でよく知られる。実際、96の産業中分類別に賞与と所定内給与の比率を算出すると、最も低いのが「職業紹介・労働者派遣業」だ(図参照)。派遣会社の社員も含めた数値だが、残業時間の比率はほぼ全産業平均であり、契約上想定される労働時間についての柔軟性は保たれている。一方、賞与比率の低さは特徴的で、現実に職務が限定された派遣労働者には成果に連動する賞与や一時金が適用されにくい。職務を限定することと業績変動給の組み合わせは、相性が悪いことを示している。

結局、ジョブ型雇用を職務記述書と成果給の混合と解釈しても、その道のりは険しい。いわゆる日本的雇用慣行から抜けだそうという意図は察せられるが、その組み合わせは論理的な矛盾をはらんでいる。さらに職務記述書を重視するのであれば、使用者は日本的雇用慣行の下で享受してきた広範な人事権を一定程度諦めねばならない。現場の創意工夫では生産性の向上は見込めず、あらかじめ設計された効率的な工程を採り入れることにより利益を得るようなビジネスにこそ、ジョブ型雇用は適するが、現状の派遣労働の普及率をみてもその範囲は広くはないと考えたほうがよい。

日本社会でジョブ型雇用を広めるには、職務の明確化と契約の柔軟さという二兎(にと)を追う必要がある。一つの工夫として、使用者と被用者の交渉力の不均衡を前提とする日本の労働契約法で可能かはわからないが、職務の明確化についてネガティブリストを活用するというアイデアがある。「この職務を担う」というリストを例示と考えるか、「この職務は担わない」と限定するか、その両方をとるかというアイデアだ。

ただし契約の柔軟さを実現するには必ずグレーゾーンの解釈を経なければならない。ジョブ型雇用は、契約の力を借りて日本的雇用慣行よりも曖昧さを減らすという程度の問題でしかないともいえる。ジョブ型雇用の議論が提起した本質的な問題は、従来の日本的雇用慣行の下でグレーゾーンの解釈を担ってきた個別の労使合意が機能する範囲が狭まり、復旧を目指すか代替する制度を考えるか、早急に考えねばならない点にあるのではないだろうか。

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