【認定心理士】 「目標の欲求勾配仮説」ー2
【福岡/北九州/認定心理士】 「目標の欲求勾配仮説」ー2
目標の欲求勾配仮説をマーケティングで活用した事例を紹介しましょう(C・ハース、D・ハース著「スイッチ!」早川書房)
ある洗車場でスタンプカードを使った販促を始めました。ひとつの客のグループには、洗車するたびにスタンプを押し、8回たまると1回無料になるキャンペーンとしました。
別の客のグループには、1回無料となるには10回スタンプを集めないといけないようにしました。ただし、そのカードにはすでに2個のスタンプが押されており、「スタートダッシュ」ができるようになっていました。
どちらのグループも、8個のスタンプを集めなければならず、目標の大きさはまったく同じです。一方はゼロから始めなければいけないのに対し、もう片方はゴールまですでに20%進んでいます。数カ月後、どちらのグループが、目標を達成した人が多かったでしょうか。
8個用のスタンプカードを受け取った客は、19%しか無料の洗車までこぎ着けませんでした。かたや、スタートダッシュを切った客では、34%がスタンプをため切り、しかもため切るまでの時間も短かったそうです。
つまり、「思ったよりもゴールラインの近くにいると感じさせるのが、行動を促すひとつの手」(同書)なのです。だから、この種のスタートダッシュつきの販促キャンペーンが世の中にたくさん出回っているわけです。
スタードダッシュは、個人や組織の目標達成にも応用できます。「スケーリング」や「ミラクルスケール」と呼ばれる手法があります。
たとえば、あなたが「今年1年かけて、英語をもっと上達させたい」という願望を持ったとしましょう。おそらく、まったく英語ができないことはなく、ある程度はできていて、「さらに」という話だと思います。
だとしたら、過去にも数々のトライやチャレンジをしているはずです。一度、それらを洗いざらい出してみることをお勧めします。「英会話スクールに通った」「NHKの教育番組を見ていた」「英語圏の人と友達になった」といったように。
うまくいったかどうかは問いません。失敗したり断念したりしたことでもOK。過去にやってみたことや、現在やっていることであれば、どんなささいなことでも構いません。とにかく、思いつく限り挙げてみてください。
その上で、それだけの努力の結果、目標への長い道のりのどのあたりにいるかを考えてみましょう。パーセンテージで表すとどのあたりでしょうか。これがスケーリングです。
多分、ゼロということはなく、数十%程度ではないかと思います。頂上は、はるかかなたではなく、すでに何合目かまで登っているのです。もう少し頑張ってみようという気になりませんか。多少でもなったとしたら、目標の欲求勾配仮説が効果を発揮している証しです。