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学力の診断と評価

学力の診断と評価

最近では、教育界でも、目標に基づいて計画・遂行したあと、きちんと評価して次の行動に生かすというPDCAサイクルの考え方が求められるようになっている。
評価の目的が、学習の改善にあることを踏まえて、学校におけるさまざまな学力評価の方法を整理する。
また、現在の指導要録での評価の動向について押さえておく。
さらに、新しい評価として、COMPASSPISAパフォーマンス評価などについて触れる。

1.学力の診断と評価をめぐる考え方
(1)診断と評価とは

教育場面において、診断(assessmentあるいはdiagosis)とは、学習者がどのような状態であるかいろいろな情報によって分析的にとらえることをさし、その後の指導の手立てとするという語感がある。
したがって、教育的なはたらきかけの事前、または途中において行うのが普通である。
また、必ずしも、良さとか望ましさの価値判断を含まない診断(例えば、性格や興味などの個人的特性)も存在する。
一方、評価(evaluation)というのは、教育の結果として生じた学習者の状態に対して、何らかの価値づけを伴う情報を表出するという語感がある。
1970年代のカリキュラム論や評価論に大きな影響を与えたアメリカの教育心理学者ブルーム教授ー額種過程の収集として行う診断的評価、途中の状況を把握して指導の調整に生かす形成的評価、学習成果のまとめとしての総括的評価を効果的に行うことで、完全習得学習(mastery learning)なされるというモデルを提案している。
ここでは、「評価」を広い意味に用い、「○○的」として、行う時期と目的に区別があることを示している。

(2)PDCAサイクルと指導・評価の一体化

近年、もともと品質管理や企業経営の分野で基本とされていた計画(Plan)-実施(Do)ー検証(Check)-行動(Action)によって改善を図るというPDCAサイクルが教育の世界でも強調されるようになってきた。
もちろん、教育場面では客観的で数量的な効果検証が常にできるわけではないので、すべてにこのサイクルをあてはめることはできないが、目標を明確化し、それがどれだけ達成されたかを認識し、次の指導につなげていくということは必要である。
このことは、教育界で、指導と評価の一体化といわれてきたことと通ずる。
ここで強調されているのは、第1に、「教育目標に沿って指導をしたら、評価もそれに対応したものになっていなくてはならない」ということだ。
第2に、「評価したことを、次の指導にきちんと生かす」ということである。

2.学力の診断・評価の方法
(1)診断・評価の種類とその特徴

学力の診断・評価についても、学校現場で用いられる方法はいろいろである。
それらを概観するときに「フォーマルな評価」「インフォーマルな評価」という一つの軸となる。
フォーマルな評価
①指導要録ー文部科学省が様式を定めた、学校における評価記録の原簿
②通知表ー学期ごとに児童・生徒や保護者に通知される成績の総括的な評価
③ペーパーテストー定期テスト、授業中の小テストなど
④制作物ー比較的長い時間をかけてつくられたる作文・レポート・作品など
⑤実技テストー実技、発表、口頭試問などの評価
⑥ポートフォリオー学習過程で蓄積された記録や中間制作物
⑦授業内の行動観察ー日常的な授業の中での応答、解答のようすなど
⑧質問紙、自己評価ー学習者自身による学習の記述、評定、観察など
ペーパーテストは実施の容易性、客観性、公正さなどが長所とされているが、反面では測定される学力が限定されてしまうという欠点もある。
なお、いろいろな評価方法を比較検討するときに、信頼性と妥当性という観点は非常に大切である。
信頼性(reliability)とは、ある指標がどれくらい再現性のある安定した値をとるかということである
妥当性(validity)とは、ある指標が、本来図ろうとしている特性をどれくらい的確に表しているかということである。

(2)学校教育における評価方法の変遷

1989年の学習指導要領改訂に伴い、指導要録も改訂されることになるが、このとき「関心・意欲・態度」「思考・判断」「知識・理解」といういわゆる観点別学習評価が重視されるようになった。
関心・意欲・態度を最初に置き、それまで重視されていた知識・理解を最も後ろに置いた点にも、1990年代の「新しい学習」「ゆとり教育」の基礎となった教育理念が表れている。
1998年に俗に「ゆとりの集大成」といわれる学習指導要領改訂が行われるが、その流れを受けて、相対評価よりも到達度評価がいっそう重視されるようになり、児童・生徒の学習状況をさまざまな規準(評価や観点や次元にあたるもの)と、基準(それぞれの規準において、どれくらいのレベルにあたるかというもの)によってていねいに評価することは推奨されるようになった。
しかし、一方では、2000年前後の「学力低下論争」で、学習意欲や知識・技能面での学力がかなり低下していることや、国が学力の変化を把握することを怠ってきたことを指摘する声が高まり、2007年には、実に43年ぶりに「全国学習状況調査」と呼ばれる悉皆の学力調査が復活し、小学6年生と中学3年生を対象に実施された。
そのご、悉皆調査ではなく、30%~40%の抽出校のほか、任意で参加可能な方法に切り替えたが、2012年の全国平均で約80%の参加率となっている。
このテストはPISAの影響もあり、基礎基本的な知識を問う問題(A問題)とともに、日常場面での活用を見る問題(B問題)が算数・数学と国語それぞれに設けられていることが大きな特徴である。
2007年の学校教育法の改正では、それまでの学力論議を踏まえて、学校で育てる学力とは、①基礎的・基本的な知識・技能、②知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等、③主体的に学習に取り組む態度、であることが明言された。
これが学力の3要素と呼ばれるようになり、2008年の学習指導要領にも引き継がれた。
これに伴う指導要録の改訂に際して、それまでの観点別評価とこの3要素との調整が図られたが、大きな変更はせず、それまでの「思考・判断」を「技能」とするに留めた。
すなわち、「表現」というのは思考や判断の結果を表出するような高度なものとし、基礎的で定型的な表現は「技能」に含めることによって、なんとか対応を図ったということになる。

3.新しい学力評価の動向
(1)新しいタイプの学力テスト

人間の認知的な情報処理モデルに沿って、数学的問題解決における要素的な学力を診断するのがCOMPASS(componential assessmet) というテストである。
従来の数学のテストが「数と数式」「方程式」「関数」「図形」のような領域別に出題し、得点化するのと対照的に、COMPASSはそれぞれの領域の問題解決に共通する、「数学的概念に関する知識」、「図表など視覚的表現の生成」、「論理的な推論」、「基本的な計算ルールの獲得」といった学力の構成要素(コンポーネント)を診断しようとする。
数学の文章題を解決するときの認知モデルでは、解決過程の中にコンポーネントが位置づけられている。
それぞれのコンポーネントを診断するために、数分の制限時間で解くような課題(task)が用意され、プロフィールと学習改善のための指針が生徒にフィードバックされる。
また、PISAや全国学力調査B問題なども、ペーパーテストという形態ではあるが、その内容は、従来の学力テストとはかなり異なっている。すなわち、学校の授業や教科書で習うような教科そのものの知識というより、その知識を日常生活場面で活用して問題解決ができるかどうかという視点で問題が作られている。
例えば、「読解リテラシー」の問題というのは、国語によくある文章読解テストとは異なり、新聞や雑誌に出てくるような図表とテキストから成る説明を読んでその意味を把握したり、内容を理解した上で書き手の立場を考えて自分なりの論評を加えたりすることなどが要求される。

(2)パフォーマンス評価の発展

もう一つの大きな動きとして、パフォーマンス評価のさまざまな方法が発展し、学校現場にもとりいれられるようになってきたということがあげられる。
いわゆるペーパーテストが、一律に与えられた問題に一定時間とりくませ、どれだけ正答できたかによって評価する方法であるのに対して、パフォーマンス評価は、製作物や実技・実績から評価する方法である。
学習のプロセスにおける中間的な資料や製作物などをファイルにしたものをポートフォリオと呼び、これを学習者が振り返って自己評価したり、教師がそれを見ながらアドバイスしたりするのに使われる。
規準・基準の明確化というのは、主観的になりがちな評価をできるだけ客観的に行うための一つの方法である。
パフォーマンス評価の場合には、ルーブリックという評価基準表が作成されることがしばしばある。
例えば作品の場合、各段階のレベルを設定し、それぞれのレベルはどのような特徴を備えたものか、その典型例はどのような作品かを例示する。
採点者には若干の訓練を行い、判断が大きく逸脱しないようにしたり、複数の採点者をつけるなどの工夫をする。
こうした努力は、確かに手間のかかることではあるが、学習者に本来の学習目標に向かわせ、そのために必要なフィードバックを与えるためにはひつようなことといえよう。

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