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学習意欲の理論

学習意欲の理論

近年、日本の子どもたちの学習意欲が低下しているといわれる。
いくつかのデータで確認してから、心理学における学習動機の理論を概観する。
外発と内発の動機づけを対比させつつ、どのように統合的に考えていくかを示す。
また、動機づけの認知理論では、自らの努力と結果とが随伴しているという認知が意欲に結びつくことが強調される。
学習指導においては、具体的にどのような方法があるか、個人差にどう対処するかなどに配慮することが必要である。

1.学習意欲の低下の現状
(1)日本の子どもたちの学習意欲
(2)学習意欲の経年変化

2.心理学における学習意欲のとらえ方
(1)外発的動機づけと内発的動機づけ

心理学では学習や仕事への意欲、いわゆる「やる気」の問題を、動機づけ(motivation)として扱ってきた。
動機(motive)とは、個々の行動を引き起こすときの心理的な理由にあたるものであるが、その背後にあって動機を生じさせる基本的な欲求が動機づけとなる。
一般に、生理的欲求、社会的欲求など、他の欲求を満たすための手段として喚起される意欲外発的動機づけと呼ばれる。
それに対して、1950年代ごろから強調されるようになったのが、内発的動機づけである。
これは、他の報酬を得るための手段としてではなく、学習それ自体を目的とするような欲求である。
たとえば、新規な刺激や情報を求めるという知的好奇心、知識の相互関連やものごとの原因・理由を知りたいという理解欲求、技能に習熟してうまくできるようになりたいという向上心などを挙げることができる
内発的動機づけは、進化の系統の中で高次にある動物に備わった欲求と考えられ、報酬を伴わなくても生じる。
さらに、内発的に行っている行動に、むやみに報酬を伴わせると、かえって内発的な意欲が低下してしまうことがあり、これは内発的動機づけ減退効果(undermining effect)と呼ばれている。
デシは大学生を対象として、実験群にはパズルを解けると金銭的報酬を与えることにし、報酬なしの対照群の学生と比較した。

(2)学習動機の分類と構造ー2要因モデル

市川(1995)は、大学1年生に対して、学習の動機や目的を自由記述で収集し、あがってきたさまさまな動機を分類して構造化した2要因モデルを提案している。
内容関与的動機ー充実志向、訓練志向、実用志向
内容分離的動機ー関係志向、自尊志向、報酬志向

(3)動機づけの認知理論

学習に対する動機づけが高いかどうかは、けっして生まれつき決まっているわけではなく、長い間の個人的経験や社会的環境によって形成された認識によって決まるという一群の理論があり、「動機づけの認知理論」と呼ばれている。
アトキンソン(1964)期待・価値理論では、動機づけは、期待と価値の積によって決まると考える。
ここでいう期待とは、どのくらいの確率で求める対象が得られそうかという見込みであり、価値とは、その対象が自分にとってどれくらい有益であるかという評価である。
積であるから、どちらかがほぼゼロであれば、一方だけが高くても意欲はわいてこない。
学習における期待というのは、自分が努力すれば目標が足せられるという経験をどれくらい積んできたかに依存する。
つまり、自分の行為と成功・失敗が伴っているという随伴性の認知があれば、やる気にもつながることになる。
逆に、成功するか失敗するかが、自分の行為と無関係に生じるのであれば、やる気をもってとりくむことは起こりにくい。
このことを、動物実験で明確に示したのが、セリグマンらの学習性無力感(learned helplessness)の研究であった(1967)。
この現象は、人間の場合でも実験的に示されており、「自分が何か行動をしても、どうせ結果に影響を与えることはできない」という認知を後天的に獲得してしまったためとされる。
一方、私たちは、成功や失敗が起こると、いったいそれはなぜだったのかという原因・理由を考えるだろう。
社会心理学の分野でこうした原因の推論を扱う理論はと呼ばれているが、これを学習動機付けの領域に導入したのがワイナーである。
ワイナーによると、学習の結果がなぜ生じたかという原因の一つの次元は、原因が自分の中にあるか、外にあるかということであり、もう一つの次元は安定しているか、容易に変化しうるものかということである。
これらの2次元を組み合わせると、4つの区分ができる。
私たちがやる気になるのは、内的で可変的な要因である自分の努力に帰属された場合であるという。
確かにテストで悪かったときに、外的な要因である課題や運のせいにしたり、内的で安定した要因である能力のせいにしてしまったら、勉強しようという意欲はわいてこないだろう。
バンデューラの提案した結果期待と効力期待という考え方にも触れておきたい。
結果期待(outcome expectancy)とは、自分がある行動をとればよい結果が得られるだろうという期待のことで、随伴性の認知にあたる。
一方、自分はそのような行動を実際にとれるかという期待が効力期待(efficacy expectancy)である。
たとえば、1日8時間勉強すれば必ず合格するだろうという結果期待をもっていても、自分が1日8時間勉強するという見込みがもてなければ効力期待は低いことになる。
その場合、「やれば成功するはずだが、とてもやれない」と感じてしまえば、やる気につながらない。
学習指導の場合にも、随伴性の認知を高めるだけでなく、学習者が「これなら自分でもできそうだ」と思えるような、実行可能な学習方法を教示する必要があるだろう。

3.どのように学習意欲を引き出すか

習得と探求の2サイクルモデルでは、探求的な活動を行ってみて、そこで基礎基本の不足を実感し、必要感をもって習得の学習を行うのが「基礎に降りていく学び」である。
けっしてテストのためにあるわけではなく、生活や仕事に活用されるものであるということを実感させることによって、やる気を引き出していくことが考えなければならない。
教育場面での意欲を育てるのに、心理学から示唆される重要な点として、関係性自律性感覚がある。
教育や学習は、教育者の意図や指示に沿って学習者が行動することで生じることが多いが、その人間性のあり方が関係性(relatedness)である。
関係性が良好であれば、学習者は教育者の価値観を自発的にとりこみ、学習が円滑に進むようになる
一方、自律性感覚とは、学習者が自分の意思で行われているという感覚である。
とくに思春期以降になると、人は他者からコントロールされることを嫌う傾向が強くなる。
勉強や奉仕活動など、基本的にはよいことであると思っていても、あるいは、そう思っているからこそ、それが他者から強制されてしかたなくやっているという認知をもちたくない。
そのためには、学習場面においても、自己選択や自己統制の機会を多くしていくことを考えなければならない。

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