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言語活用力を育てる 2

言語活用力を育てる 2 

2.心理学から言語活用力と言語活動を考える
(1)読むことの心理プロセスと指導

まず、認知心理学や教育心理学では、読むことに関する研究が蓄積されてきた。
これは、言語活用力の基礎となる、「情報の理解」に関わる研究であるといえよう。
これらの研究知見から考えると、「読解力」や読解の指導に関しては、一般に3つの誤解があると思われる。

第一の誤解は、「読む(読み上げる)ことができれば意味を理解できる」という誤解である。
私たちの読むプロセスは、文字を読み上げ情報を積み上げるようなボトムアップのプロセスだけでなく、知識の枠組みを用いたトップダウンのプロセスが必要なのである。
第二の誤解は、「読解力を高めるには『本をたくさん読む』しかない」という誤解である。
中等教育に入ると、単に読み上げるだけでなく、よりよく理解することが必要になるのである。
そのためにはただ量をこなすだけでなく、よりよい「読み方」が重要になってくる。
「読み方」のことを、心理学では「読解方略(Reading strategy)」と呼んでいる。
犬塚(2002)は、提案されているさまざまな読解方略の因子構造を検討し、7つのカテゴリーとさらに上位の3因子によって構成される方略の構造を示している。
方略因子・・・❶理解補償方略、方略カテゴリー・・・①:意味明確化、②:コントロール
方略因子・・・❷内容理解方略、方略カテゴリー・・・③:要点把握、④:記憶、⑤:質問生成
方略因子・・・❸理解深化方略、方略カテゴリー・・・⑥:構造注目、⑦既有知識活用

読解方略は、こうしたトレーニング以外の可能性を示すものである。
単に「たくさん読む」ことだけでなく読み方を指導することで、学習者の読解成績が向上したことを示す研究が数多くなされている。
読解方略の視点をもつことが重要である。
第三の誤解として、「読むことは個別的な活動だ」という考え方を挙げたい。
読解の成績が低い学習者が対象となり、グループで読解方略を学んでいる。
研究では、学習者は教師の援助を受けながら、方略を用いるモデル役を交代で演じて読み方を身につけていく。
グループで読むことで、より読解と読み方の獲得が促進されるのである。
以上の研究知見は、「情報の理解」に関するものであり、広く言語活用力についての知見を提供するには限界がある。
しかしながら、「情報の理解」言語活用力の基盤であり、この基盤を十分に育成せずに、思考と表現の力のみを育成するということはできない。
知識や方略を明示的にとりあげた読解指導が行われること、協同の利点を活かした読解指導が行われることが重要である。

(2)言語活用力を育成する

上述した「情報の理解」に関する研究に比して、より広く言語活用力の観点から行われた研究は少ない。
その中で、近年注目されているのは、「批判的読解」である。
「批判的読解」とは、批判的思考(Ennis,1996)を読解において実践することだといえる。
すなわち、読んだ内容について分析的に考え、吟味し、価値判断を下すこと、と定義できる。
たとえば、論文の批判的読解を題材とした研究(沖林、2004)では、読解内容に関するディスカッションとより熟達した読み手による実例(ガイダンス)を示すことでより適切な批判が可能になることが指摘されている。
また、スキルとしての側面をより重視する「言語技術」の観点から、批判的読解を育成するための提言もなされている(井上、1998)。

(3)言語活動による学習の促進

前項では、言語活動による言語活用力の育成が焦点となっていた。
一方、心理学では、言語活動による概念理解の促進効果に着目した研究もなされている。
代表的な研究として、Chiらは、中学生を対象とし、循環器系の仕組みについての説明文を読み、理解するよう指示した。
その際に「自己説明」条件に割り当てられた参加者は、「一行読むごとに、内容を自分に説明しながら読む」よう指示を受けた。
この指示以外には特別な訓練などはなされていなかった。
一方、「統制条件」に割り当てられた参加者は、特に何の指示も受けずに説明文を読んだ。
この「自己説明条件」の参加者と、「統制条件」の参加者に、事後テストを行い、循環器系の理解について比較したところ、「自己説明条件」の参加者ほうが高い理解度を示したのである。
この結果は、特別な訓練をせずとも、「説明する」という形で言語化することにより、内容の理解が促進されたことを示している。
こうした説明の効能を活かした実践手法として、Miyake&Shirouzu(2006)は、自分が読んだ内容を他者に説明することを互いに繰り返していく「ダイナミックジグゾー」という手法を開発している。
ここでは、読むことが個人の中に閉じず、他者に説明し、他者の読んだ内容と統合することを通して、より一貫性のある理解現象が構築されたことが示唆されている。
さらに、Guthrieら(1998)は、概念理解と言語活用力双方の促進を同時に志向する、Concept Oriented Reading Instruction(CORI)という指導方法を提案している。
Reading Instructionという名前からもわかるように、この指導では、読解力を高めることを第一の目標としている。
学習者は、学習目的となる概念について、実物に触れたりする中で、教材となる文章を読み、概念の理解をめざしていく。
その過程で、指導者は必要な読解方略を指導するなどをして足場作りをしていく。
Guthrieらは、CORIと伝統的な教授とを比較し、CORIで学んだ学習者のほうが読解成績と学習目的である概念の理解の両面において優れた成績を挙げたことを示している。
これらの研究知見からは、言語活動が言語活用力の育成だけでなく、概念の理解も促進することが示唆される。
言語活動が教科の中で展開される際には、とくにその理解促進効果が十分に発揮されることが、学習する側の動機づけを高めることにもつながると考えられる。

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