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言語活用力を育てる 3

言語活用力を育てる 3

3.言語活用力を育成する実践

「基盤となる情報の理解」と「説明などの言語活動による理解の促進と言語活用力の促進」が重要であることを示した。
そこで、実際の教育現場でのとりくみを紹介し、より実践的に考察する。

(1)プロジェクトとしての言語活動

教員が「言語活動」と聞いて、まず想定するのは「プロジェクト型」の言語活動である。
ここで、「プロジェクト型」と呼ぶのは、特定の単元や特定のテーマに沿った指導を計画し、実行していくタイプの授業である。
文部科学省のよって、多くの言語活動の指導案例が示されている(文部科学省、2011)が、その多くが「プロジェクト型」である。
「言語活動の充実に関する指導事例集」小学校版に掲載されている、国語・社会・算数・理科・総合の事例をみると、いわゆる「調べ学習」あるいは「作品発表」のような活動が、教科の時間や総合的な学習の時間に実施されることが多い。
同様に市販されている「言語活動」に関わる書籍のほとんどが、こうしたプロジェクト型の言語活動に焦点を当てている。
プロジェクト型の言語活動の利点としては、児童生徒に集中的な活動をさせることにつながり、活動のインパクトが大きいことが挙げられる。
Guthrieら(1998)CORIもプロジェクト型の言語活動といえ、その利点を活かした指導方法である。
一方で、プロジェクトが終了っすると同時に活動が終了してしまうことが多く、持続性や自発性につなげることが難しいことも少なくない。
また、こうしたプロジェクト自体が、学習者が一定の「情報理解」や基本的な表現技術といったスキルを有していることを前提としていることも多い。
活動を進める中で身につけていくところもあるが、前提となるスキルが不足しているために、プロジェクト型の活動を十分にできない児童生徒の姿もみられる。

(2)日常的な学習活動としての言語活動

いくつかの学校で実践されているのは、ノート作りの指導であろう。
ただ黒板に書かれたことを写すのではなく、思考過程や説明を自分で記述させたりすることで、学習者の言語活用力を高めようとする試みなどが挙げられる。
また、「教えて考えさせる授業」(市川、2008)という授業枠組みでは、授業のさまざまな場面で言語活動を取り入れている。
たとえば、教師の説明のあと、学習者同士の「教え合い」や「説明」をさせる。
これらの活動は、学習者自身が自分の理解度を認識すること、概念理解を促進すると同時に言語活用力の育成を意図したものである。
「教えて考えさせる授業」では、授業前の予習段階、授業終了後の自己評価などの形でも言語による説明や記述をとりいれることを提案している。
授業の中にさまざまな形で言語活動がとりこまれることで、学習者の概念理解と言語活用力の育成をより進めることが期待できる。
一方、授業自体の形態を変えずに、特定のツールを用いることで持続的に言語活動を実践していくことも有効な方法である。
ツールがあることで、学習者はどのようなことをすればよいのかを的確に理解することができるし、教科を超えた活動につなげていくことができる。
こうした活動の例として、付箋型のノートを言語活動ツールとして用いる試みを行っている。
国語の時間に配布し、教科書の文章について自分が考えた、感じたこと、疑問を書いて貼る、ということが指導の中心である。
持続的に書くきっかけが与えられることで、「説明すること」「書いて表現すること」に対する抵抗感をなくし、より本格的な言語活動に向けての基盤づくりができる。
より体系的なとりくみとして、「マイディクショナリー」がある。
「マイディクショナリー」は、教科ごとに異なる色の紙を用意し、自分が新しく学んだ言葉の意味と、そのときの自分の学びの記録(感想や自分が考えたポイント)を記録していく「単語帳づくり」に似た行動である。
この実践の優れた点は、まず「説明する」という活動を、さまざまな教科で横断的に実施できることである。
「説明する」ことが中心となるプロジェクト型の活動において積極的に「説明する」活動に参加していた児童生徒であっても、プロジェクトが終わったあとで、ほかの教科や単元で同様の活動を自発的に行うのは容易ではない。
日常的なとりくみとして、「マイディクショナリー」のようなより小さな活動が根づいていることで、プロジェクト型の活動で学んだことを持続的には発揮していくことが可能になると考えられる。

今回では、まず「言語活用力」「言語的な情報を理解しそれに基づいた思考・表現を行う」力と定義し、育成のための言語活動が重視されるような経緯を概観した。
次に、心理学的側面から言語活用力と言語活動について検討し、「言語的な情報を理解する」という言語活用力の基盤の部分で蓄積された知見を十分に活かすこと、その上で批判的読解に代表される言語活用力の研究蓄積が必要であることを示した。
また、言語活動を行うことが、概念理解を促進することを示し、言語活動を行う際には、教育目標に鑑みた内容の理解というか観点も重要であることを述べた。
最後に、実践に向け、プロジェクト型の実践が数多く提案・報告される中で、日常的な学習活動の実践はあまり注目されていないことを指摘した。
言語活用力の基本的なスキルを育成し、持続的で自発的な力としていくためには、日常的な学習活動を充実させることも重要である。

言語活用力とは何か?
・言葉を用いた「理解」「思考」「表現」を統合的に行うこと

言語活用力に関する心理学の研究
・「読むためには、知識や方略が重要。協同で深まる部分もある
・言語活用によって理解が促進される

言語活用力を高める
・プロジェクト型の言語活動
・日常的な言語活動

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