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学力と学習支援のこれから 1

学力と学習支援のこれから 1

このシリーズ全体を貫いていたのは、学習者の情報処理プロセスをとらえるという認知心理学的な視点であった。
どういう問題に正答できたか、というだけでなく、学習者が学習内容をどのように意味理解しているのか、あるいは、問題に対してどのように考えて答えを出したのか、という思考過程を分析的にとらえるほうが学習改善に役立つ。

1.理解を重視した教育で、学習の質を高める

OECDによるPISA調査で盛んになった「学力低下論争」を受けて、学力向上は社会や学校における重要なテーマとなっている。
多くの場合、学習の量を多くしようとすることだけで対処しようしており、学習の質が軽視されているように感じられる。
また、質を高めることを主張する立場であっても、どのようにすれば可能なのかという具体的なアイデアはあまり十分に語られていないように思われる。
今回で取り上げた認知心理学の理論は有効な視点を提供してくれる。
そもそも認知心理学がめざしてきたことは、人間を一種の情報処理システムととらえ、自立した学習者はどのように学び、どのように考えているのかを明らかにすることであったからだ(市川、2013)。
「教えて考えさせる授業」の代表的技法にも反映されているように、認知心理学を生かすこと、こういうことこそを授業の中で求めていくことになる。
また、効果的な学習方法(学習方略)を活用していたり、それを支える学習に対する考え方(学習観)をもっていることも自立した学習者の特徴である。
こうした点を育てることに留意して指導を行うことで、質の改善につながる。
教育に関わるものの多くは、長年の個人的な指導体験や成功体験から現在の指導方法を確立しているため、これまでにとってきた指導方略を更新することはけっして容易ではないだろう。
こうした局面を打開するために、心理学を生かした個別学習相談である認知カウンセリングは有効である。
学習に悩む学習者と個別に向き合い、どのようなことにつまずいているのかを、理解の深さ、学習方略、学習観から見直すことによって、これまでの指導で不十分であった点に気づき、質を高めるためのヒントを得ることになる。
これは、教師力の一部としてとりあげられている困難度査定の力を育てることにもつながる。
さらにケース検討会でともに議論することを通じて、こうした発想を意識化したり、指導者同士で共有したりすることにもつながるであろう。

2.言語活用力の観点からー理解と表現を一体化した活動を

学習指導要領に「生きる力」という言葉が使われているように、学力とは私たちがこの社会で生きていくために必要な力であり、教育はその力の獲得を導くものでなければならない。
言語活用力に焦点を当て、上述の点を指摘した。
言語活用力とは、言語を用いて理解・思考・表現を行うこと、として定義できた。
思考内容は表現されなければみることはできないので、ここでは理解と表現に焦点を当てよう。
OECD学力調査(PISA)の結果からは、このうち、理解の側面に関しては日本の学習者は優れているものの、表現においては十分な力を獲得しているとはいえないことが示された。
一般に、理解することと表現すること、つまり、「読むこと」と「書くこと」は別々の課題としてとりあげられる。
このように考えると、読むために書く、書くために読む、といったように、より両者を関連づけた指導が必要であると考えられる。
Guthrieら(2004)は、ある概念に学ぶことを目的とした一連の活動の中に、読解を組み込み、具体的な方略を教示したり、学習者同士で協同読みを行なったりすることで概念の理解や読解スキルが向上することを示している。
この指導は、動機づけを高め読み手がより主体的にとりくむことをめざしてデザインされたものである。
一方で、自分の理解を他者と共有することを通して、上で述べたように理解と表現をつないだ活動になっている点も重要である。
また、福澤(2012)は、読解スキルについて解説した著書の中で、「書くように読む」ことが批判的読解(critical reading)につながる、と述べている。
よい文章の書き方を知ることで、その枠組みから読んでいる文章がよい(説得的・論理的な)文章かを検討することができるためである。
このように、読むことと書くことを別々の切り離された活動としてとりあげるのではなく、両者が一連の活動であることが学習者により意識されるような指導が必要である。
またインターネットが発達した現代において重要な意味をもつと考えられる。
紙に書かれた文章を読むだけではなく、ハイパーリンクをたどって自分の学習を深化させたりシミュレーションやCGによって、従来視覚化の困難だった情報を目にしたりすることも容易になってきている。
インターネット(特にソーシャルメディア)の発達によって、自分の知識や意見を発信することも容易になってきている。
しかし、こうした環境があるということが、直接私たちの理解や表現を豊かにするわけではない。
このように多様化した情報と表現する機会の拡大のメリットを十分に享受するためには、基本となる言語活用力が必要であると考えられる。
読むことから書くことを考える、書くことから読むことを考える、という双方向の活動が十分になされることが、こうした発展的な理解・表現活動に参加する力を身につけていくためにも必要なのである。

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