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予言がはずれるとき 1

予言がはずれるとき 1

1.研究の背景、社会心理学における位置づけ

「認知的不協和理論」という社会心理学において最も有名な理論の1つを、現実に起こった出来事の緻密な観察によって検証しようとしたものである。
『予言がはずれるとき:この世の破滅を予知した現代の集団を解明する』は、ある新興宗教集団に著者自ら潜入し、一信者として内側からその活動の様子を観察、記録した(すなわち、参与観察を行った)ものであり、その意味で異色の存在である。
本書の著者の1人であるレオン・フェスティンガーは、本書を出版した翌年に、実験や調査から得られたデータを集積した書籍を出版し(1957)、改めて正式に認知的不協和理論を世に送り出している。
フェスティンガーは、彼の提唱する理論を、さまざまな研究法を用いて、またさまざまな研究法を用いて、またさまざまな問題を対象として検証することで、理論としての妥当性とその応用可能性を示して見せたのだと考えられる。
では、認知的不協和理論とはどのような理論だろうか。
その基本仮説は以下のとおり、非常に単純である(1957)。
(1)不協和の存在は、心理学的に不快であるから、この不協和を低減し協和を獲得することを試みるように、人を動機づけるであろう。
(2)不協和が存在しているときには、それを低減しようと試みるだけでなく、さらに人は不協和を増大させると思われる状況や情報を、すすんで回避しようとするであろう。
ここで言う「不協和(dissonance)」とは、私たちが日常的に用いる「矛盾」という言葉と同じような意味の用語で、論理的曖昧性を軽減するために、フェスティンガーは、この言葉を用いたとしている。
またこの不協和は、認知間の不協和のことだが、フェスティンガーは、「認知(cognition)」を環境に関する、自分自身に関する、自分の行動に関する、あらゆる知識、意見、または信念」と説明している(1957)。
したがって、認知的不協和理論主旨は、自分や自分を取り囲む環境に関する知識や意見、信念の間に互いに矛盾が生じた場合、私たちはそれを不快に感じ、何とかしてそのような矛盾を低減しようとしたり、矛盾を生じさせる源から回避したりすることで、自分の内部から矛盾を取り除こうとするというものである。

2.研究、本の内容の紹介
(1)予言と認知的不協和

では、この認知的不協和理論と、フェスティンガーらが潜入調査した新興宗教集団とはどのような関係があるのだろうか。
フェスティンガーは、自分や自分を取り囲む環境に関する知識や意見、信念の間に矛盾、すなわち不協和が生じる状況の1例として、自らが強い信念のもとに帰依をしている教団の指導者によってなされた矛盾が誤りであったことが明らかになる状況を想定した。
フェスティンガーは、熱心な信者ほどむしろいっそう自分の信念を確信するようになり、布教活動にもより熱を入れるようになると予測した。
なぜなら熱心な信者の信念は確信に満ちたものだから容易に揺らぐものではないし、ましてそれを他人に公言していたり、宗教活動に専念するために仕事を辞めたり、家財を売り払ったりといった取り返すことが困難な行動に従事した場合に(著者はこれを「コミットする」という言葉で表現している)、信念を変えることは、それまでの自分の生き方を否定することにもなりかねない。
そこで行われるのが、もう一方の認知を変えることである。
すなわち、予言ははずれておらず、自分の信念は間違っていないと思い込むのである。
しかし、これ1人ないし少数で行う場合、すぐにこの認知を覆す客観的事実を突きつけられ、また不協和に見舞われてしまうだろう。
それを回避する別の有効な方法は、信念を共有する人を増やし、周囲を同じ信念を持つ人で固めることである。
自分の信念が多くの人に共有されていると考えることは協和的な認知をもたらし、不協和を解消してくれる
書籍の冒頭、著者らは歴史上あったさまざまな教団の予言を取り上げ、残された資料をもとに、予言がはずれたときに何が起きたかを丹念に検討している。
その結果、確かに多くの場合において、予言の失敗後、信者たちの布教活動が活発になるらしいことがわかった。
しかし、これは、歴史的資料という限られたデータに基づく検証である。
フェスティンガーの提唱する認知的不協和理論のアイデアを、より細部にわたって検討しようとするなら、自ら必要なデータを収集することが必要である。
そこで、フェスティンガーは、偶然見つけた世紀末を予言するある宗教団体に観察者を送り込み、自らも関係者と接触を試みたのである。

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