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予言がはずれるとき 2

予言がはずれるとき 2

3.その後の研究の展開と現状、他の研究との関連
(1)不十分な正当化

フェスティンガーは、本書を出版した翌年に、「認知的不協和理論」を正式にまとめた本を出版し(1957)、実験研究を報告する論文も次々と提出した。
不十分な正当化の実験では、
少ない報酬のほうが、態度変容の度合いが大きいというこの実験の結果は、当時、隆盛を極めていた行動主義や学習理論の考え方に真っ向から異議を唱えるものだった。
行動主義的な考え方からすれば、人はより多くの利益がもらえることを進んで行うはずである。
したがって、行動主義の立場から予測するなら、より多くの報酬を受け取った実験参加者のほうが、本心から実験は面白かったと答えるはずである。
しかし、実験結果は反対だった。
これは人間という存在を理解するには、行動という目に見えるものだけを研究対象にしていては不十分だということである。
すなわち、自分や自分を取り巻く環境を人がどのように認知するかによって行動は変わってくるし、また行動によっても認知は変更されるのである。
社会心理学において、「認知」の重要性が正式に認められるようになるのは、のちに、いわゆる「認知革命」と呼ばれる一大改革があり、心理学全体が「心の働き」に関する認識を大きく改めて以降のことだが、フェスティンガーは、こうした歴史的流れに先んじて、「認知」を前面に出した理論を提出したという意味での先見の明があったといえるだろう。
以降、認知的不協和理論の研究は、一大ムーブメントとなり(2012)、数多くの論文が提出された。

(2)入会儀礼

結果は、
入会テストが厳しい条件の参加者は、緩やかな条件や統制条件の参加者より、討議内容やメンバーを魅力的だと評価している。
すなわち、苦痛や困難を経験させられた参加者のほうが、より好意的な評価をしたわけである
これは、入会テストが厳しく、そこに苦痛や困難を経験した者ほど、仮に自分が入会する予定のグループが魅力的でなかったとしたら、不協和を経験するためだと考えられる。
しかもこの場合、不協和を解消しようにも、このグループに入会するために恥ずかしい行為をしたという事実は取り消すことは不可能なので、自分の行動に関する認知は変えることはできない。
そこでもう一方の「そのグループやそのメンバーは魅力的ではない」という認知を反転させることで認知間の協和を計ったのだと考えられている。
新興宗教の団体を初めとして、学校の部活動やサークル、会社などに新たに入ってくるメンバーに、古参のメンバーが、入会儀礼として厳しい経験を課すケースは多い。
ここで示した実験は、それがいかに厳しい経験であっても、いったんそのような入会儀礼を通過してしまうと、皮肉なことにその経験が正当化され、厳しい入会儀礼を課した人や集団をむしろ肯定するようになることを示唆している。

(3)認知的不協和理論の汎用性

さて、このように「認知的不協和理論」は汎用性が高い理論である。
私たちの身の回りにある実に多様な現象を認知的不協和理論によって解釈することが可能である。
また、認知的不協和理論を通してそれらの現象を解釈することで、私たちが自分の心の中にある矛盾を解決する(すなわち不協和を低減する)というただそれだけの動機が、第三者から見れば極めて不合理な行動や心の変化をもたらすことも理解できよう。
ただし汎用性は諸刃の剣であり、この場合、多くの現象に伴用可能であるということは、それだけ理論の詳細が曖昧であることの裏返しだという批判もある。
また、人は常に認知的に安定した均衡状態を保つよう動機づけられるという、認知的不協和理論の核となるアイデアは、もともと生物の身体維持機能であるホメオスタシスからの類推で生まれたものであるが、認知的な安定状態は常に求められるものではなく、人はときに敢えて不均衡な認知状態を楽しむべき行動すると指摘する研究者もいる

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