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影響力の武器 1

影響力の武器 1

1.研究の背景、社会心理学における位置づけ

『影響力の武器:なぜ、人は動かさせるのか』は、社会的影響過程を専門とするロバート・チャルディーニが記した邦訳版であり、2007年に出版された。
著者チャルディーニは他者による説得をすぐ承諾してしまう経験が多かったと述べている。
確かに、私たちは誰でも多かれ少なかれ、日常生活において、あとでよく考えたらそれほど必要ではないような商品に飛びついたり、本当はしたくもないことも引き受けたりという経験をしている。
どうしてそんなに簡単に他者からの説得や要請に応じてしまったのか自分でもよくわからないままのこともあるだろう。
チャルディーニはそうした経験をそのままにしておくのではなく、人はなぜ社会的影響を受けるのか研究するため、セールスを専門とする組織に入り込んでそのテクニックを学んだという。
そして3年間にわたる参与観察により、6つの方略が人間行動を導く基本的な心理的原理として用いられていることを見出した。
また、こうした原理が働きやすい状況と働きにくい状況に関しても考察した。
それらの状況とはすなわち、判断する際に自動的で簡便な方法を使うときと、さまざまな情報に対して十分に分析した上で判断するときである。
社会心理学の二重過程モデル(dual-process model)では前者を自動的処理(automatic processing)、後者を統制的処理(controlled processing)と呼んでいる。

2.研究、本の内容の紹介
(1)返報性の原理

受け手は説得される際、返報性の原理に影響を受けることがある。
返報性とは、相手から与えられた者に対してお返ししようとすることであり、広く私たちの社会に浸透している。
返報性の原理は向社会的行動においてみられるだけでなく、しばしば承諾を引き出すための技法として1つとして用いられることがある。
無料の試供品配布や試食は、商品の良さを潜在顧客に試してもらい、購買につなげようとするものであるが、そこには返報性の原理を利用する試みがひそんでいる。
つまり「タダでもらってばかりでは悪いから何かをかわなくちゃ」と受け手に思わせるテクニックなのである。
また、いったん相手にとうてい承諾できないような要求を敢えてしてそれを拒絶させてから、次の少しレベルを下げた要求を承諾させるテクニックも返報性の原理を利用したものである。
すなわち、要求を取り下げて譲歩した(要求の拒絶を受け入れた)ことに対して、相手の譲歩を引き出す(次の要求を承諾させる)方法である。
これは送り手が受け手に対して連続して働きかける手法の1つであり、”拒否したら譲歩”あるいはドア・イン・ザ・フェイス法(door-in-the-face technique)と呼ばれている。
ある研究では、大学内の献血運動の一環として実験を行った。
参加者は1回1パイント(約480cc)の献血を求められる条件(統制条件)と3年間にわたり6週間に1回同量の献血を求められ、もしその依頼を拒否した場合には、統制条件と同様に1回の献血を求められる条件(ドア・イン・ザ・フェイス条件)、また最初に献血を呼びかけるステッカーを人目につくところに貼るよう依頼され、それを承諾した場合には、統制条件と同じ1回の献血を求められる条件(フット・イン・ザ・ドア条件)のいずれかに割り当てられた。
実験参加者となった大学生がその場で献血を応諾した割合ならびに翌日、実際に献血に来た割合を調べたところ、ドア・イン・ザ・フェイス条件参加者はいずれも他の2条件よりも高かった。
またさらに、献血に協力した大学生に将来ままた献血してもらうために電話番号を教えてほしいと依頼したところ、ドア・イン・ザ・フェイス条件における同意の割合が高かった。
これらの結果は、相手から譲歩されると、人が次の要求を譲歩して受け入れる可能性が高いことを示しており、返報性の原理を実証したものである。

(2)一貫性の原理

私たちは一貫した行動を取ることを望み、また他者からも一貫していると見られることを望むため、以前の行動パターンと同様の行動をとりがちである。
一貫性の原理はこうしたメカニズムを利用している。
この原理に従うと、一度何らかの要求を承諾すると類似した次の要求も承諾しやすくなる。
なぜならば次の要求を拒否することは、行動の一貫性を保てないことを示すからである。
この一貫性の原理を用い、送り手が受け手に連続して働きかける手法として、フット・イン・ザ・ドア法(foot-in-the-door technique)がある。
これはまず相手が受け入れやすい要求をして、それを応諾させたあと、レベルを上げた本来の要求をする方法であり段階的要請法とも呼ばれている。
受け手はいったん公共の道徳にのっとった行動を取ると、自分自身を道徳心のある人とみなし、その自己イメージに一貫した行動を取りやすくなるのだろう。
子どもを対象とした実験でも、ある程度の年齢からは一貫性の原理が働くことを示されている。
7~8歳もしくはそれ以上の子どもでは、おもちゃをもっていない他のかわいそうな子どもに自分が課題で手に入れたクーポンを譲るよう求められ従った条件では、そうでない条件よりも続く課題で援助行動を取ることが多かった。
なお、ドア・イン・ザ・フェイス法フット・イン・ザ・ドア法と同様に複数回の要請をする段階的要請法として、他にロー・ボール法ザッツ・ノット・オール法がある。
これらに関しては次回に述べることにする。

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