影響力の武器 3
3.その後の研究の展開と現状、他の研究との関連
段階的要請法には、これまで見たドア・イン・ザ・フェイス法やフット・イン・ザ・ドア法に加えロー・ボール法(low-ball techique)がある。
特典除去法とも呼ばれる手法で、最初に受け手に何らかの特典を与えて要求を承諾させたあと、その特典を取り除いてしまうことである。
人が一度態度を表明すると、一貫性の原理によってその態度を変えづらく、また変えたことを表明しづらい。
たとえば商品についてくる景品が魅力的なので、ある商品を買おうとしてレジにもっていたところ、その商品は景品の対象外であることがわかっとする。
確かに景品の説明をよく読み直すと、小さい字ではあるがその旨のただし書きがあった。
こうした場合でも「やっぱり買うのをやめます」とは言いづらい。
ザッツ・ノット・オール法(that’s-not-all technique)とは、あとから特典を付けて受け手に要求を承諾させる特典付加法のことである。
たとえば、景品や値引きをあとから提案することで要求をさせやすくするのである。
相手からおまけしてくれた(相手の譲歩)ので、その申し出を受け入れる(こちらも譲歩)という、返報性の原理が働くためであろう。
また最初に提示された条件が係留点(判断基準)となり、特典が付加された条件がお得に感じられるということもある(1986)。
これらの要請法にも6つの心理的原理が利用されているため、消費者としてこうしたセールス方略に接したときには本当にその商品が必要かどうか、その価値が自分にとって高いのかどうかよく考えて判断する(統制的処理)ことが大切であろう。
6つの心理的原理
❶返報性の原理
返報性とは、相手から与えられたものに対してお返しをしようとすることである。
❷一貫性の原理
一貫した行動を取ることを望み、また他者からも一貫していると見られることを望むため、以前の行動パターンと同様の行動を取りがちである。
❸社会的証明の原理
他者が正しいと考えているであろうことに基づいて、人の物事の正しさを判断するということである。
❹好意の原理
好意を持った相手からの要求を受け入れやすいということである。
❺権威の原理
権威を持つ人や専門家の意見に従いやすい。
❻希少性の原理
限定品や残り少ない商品と聞くと、その価値が高いように感じる。
あるものを手にすることができないかもしれないというのは損失である。
①ドア・イン・ザ・フェイス法
要求を取り下げて譲歩した(要求の拒絶を受け入れた)ことに対して、相手の譲歩を引き出す(次の要求を承諾させる)方法である。
これは送り手が受け手に対して連続して働きかける手法の1つであり、”拒否したら譲歩”とも呼ばれている。
②フット・イン・ザ・ドア法
まず相手が受け入れやすい要求をして、それを応諾させたあと、レベルを上げた本来の要求をする方法であり、段階的要請法とも呼ばれている。