スタッフブログ
blog

オープニングアップ 1

1.研究の背景、社会心理学における位置づけ

ジェームズ・ペネベーカー『オープニングアップ:秘密の告白と心身の健康』を取り上げる。
親しい人に自分の気持ちや現在悩んでいることなど内面に関わる情報を打ち明けることは、日常生活の中で頻繁に行われていることである。
シドニー・ジェラードは、このように個人的な情報を他者に打ち明ける行為を「自己開示(self-disclosure)」と呼んだ(1971)。
自己開示は、打ち明け話をする「相手」が存在していることを暗黙の前提とした行為であり、社会的なコミュニケーションの一種だと考えられる。
そのため社会心理学の領域では、相互性の規範が自己開示の程度に与える影響や、自己開示が2者関係の親密性に及ぼす影響などが主に検討されてきた(1997)。
しかし、自己開示を行うことによって生じる変化は人間関係だけにとどまらない。
ぺネベーカーは、個人的な秘密を語る自己開示によって、語り手自身の健康や社会的適応が向上することを、一連の実証研究の中で示した。
そこで、このペネベーカーの実証研究の結果をまとめた著書(『オープニングアップ』)を取り上げ、私たちが日常的に行っている「自己開示」という行為が、開示者の心身の健康や社会適応にどのような影響を及ぼすのかを見ていく。

2.研究、本の内容の紹介
(1)抑制と開示が心身の健康に及ぼす影響
ペネベーカーは、深刻なストレスを体験した人々を対象にしたインタビューを行う中で、過去に辛い体験をし、それを誰にも開示しなかった人ほど、ガン、高血圧、胃潰瘍、頭痛など、さまざまな疾患を患いやすいことに気づいた。
そして、過去に辛い体験をしたこと自体ではなく、それを語ることを抑制し続けていることが、現在の体調不良の原因ではないかと考えた。

(2)開示実験の概要

開示が個人の健康に及ぼす影響を検討した最初の実験は、ペネベーカーと共同研究者によって1983年に行われた(1986)。
この実験の目的は、過去のトラウマ経験(精神的に動揺したストレス経験)についての開示が、その後の心身の健康状態に及ぼす影響を検討することだった。
この実験はアメリカの全寮制大学で実施され、実験参加者は4日間連続で実験室に呼ばれ、そこで1日に15分間ずつ個人的な事柄について開示するように求められた(ここでの開示は、口頭ではなく、文章を筆記することによって行われた)。
参加者が望む場合は、筆記した文章を実験者に提供せずにそのまま持ち帰ることもできた。
①「事実・感情開示群」の参加者は、自分が経験したトラウマについて、それがどのような出来事であり、それに対してどのような感情を抱いたかを筆記するように求められた。
②「感情開示群」の参加者は、トラウマになった出来事については直接言及せず、自分が経験した感情だけを筆記するように求められた。
③「事実開示群」の参加者は、自分が経験したトラウマの内容に焦点を絞り、自分の感情には触れないように求められた。
④「統制群」は、開示群との比較のために設けられたベースライン(非開示群)であり、この群に割り当てられた参加者は、トラウマ経験とは無関係の表面的な話題について筆記するように求められた。
そして、実験の結果、筆記を行った直後の測定では、④「統制群」や③「事実開示群」の参加者より、①「事実・感情開示群」の参加者で血圧とネガティブ感情をが上昇していた。
しかし、筆記の4か月後に行った追加測定では、健康問題の自覚や、疾病による価値同性減の頻度が低く、身体的な健康度が高かったのは①「事実・感情開示群」の参加者だった。
そして、筆記の6ヶ月後に参加者の医療機関(学生保健センター)の訪問回数を調べたところ、①「事実・感情開示群」の参加者の訪問回数が、筆記前から筆記後にかけて減少していた。
この結果は、事実と感情をあわせたトラウマの開示が、短期的には感情的動揺や生理的興奮を引き起こすものの、長期的に見た場合、心身の健康状態を高める効果を全般的に持つことを示すものである。

(3)開示がもたらすさまざまな効果

①「感情のへの効果」の場合、開示に割り当てられた参加者は、統制群に比べ開示直後には悲しみや抑うつ気分などのネガティブ感情を示すことが多く、開示後に泣き出す人も少なくなかった。
これはストレス経験について開示するように求められると、短期的には感情的な動揺が強まることを示している。
しかし、数か月後に追跡調査を行うと開示群の気分は向上し、安堵感や満足感、幸福感なども感じるようになっていた(1997)。
このように、時間の経過に伴い、観光的側面についてもポジティブな効果が徐々に表れてくることが示された。
②「認知への効果」については、自分が過去に経験した辛い出来事や、自己概念に対する「認識の変化(再評価)」が生じることがしめされている。
たとえば、開示によってそのストレス経験と自分自身に対する理解が深まり、「わかった」「理解した」「解決した」という洞察が新たに生じたと報告している(1997)。
この他に開示が認知に及ぼす効果としては、目標に向けて注意を維持・抑制し、認知処理を行う機能を持つ「ワーキング・メモリ」の容量の増加が報告されている。
③「身体的健康への効果」については、生理指標、主観的報告、行動指標など多様な指標を用いた研究がさかんに行われている。
まず生理指標をの結果を見ると、ぺネベーカーと共同研究者が行った実験では、ストレス経験を開示することで、持続した覚醒によって生じた緊張や疲労が低減したという研究結果もある。
このように、ストレス経験の開示には過度の身体的緊張を和らげる働きがあると考えられる。
④「社会生活への効果」についても、さまざまなかたちで検討が行われている。
たとえば、大学生の学業成績、失業者の再就職率、大書き職員の欠勤率、友人や家族からの支援、友人ネットワークの規模などに対して、開示によるプラスの効果が示されている(2006)。

お問い合わせはお気軽に!

ご不明・ご不安な点など、
何でもお気軽にお問い合わせください。

TEL: 093-981-0244 093-981-0244
営業時間: 10:00~19:00 不定休(カレンダー参照)