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信頼の構造 2

信頼の構造 2

(2)信頼の解き放ち理論

山岸が提唱する「信頼の解き放ち理論」をもう少し詳しく見ていこう。
信頼に関するこれまでの研究では、もっぱらそれが既存の人間関係を円滑にしたり、関係性を強化するという側面に注目がされてきた。
それに対し、「信頼の解き放ち理論」では、信頼には関係を強化するだけではなく、関係を拡張する(解き放つ)機能があることを強調する。
理論は、次の6つの命題から構成されている。
まず、1つ目は信頼は社会的不確実性が存在している状況でしか意味を持たない。つまり、他人に騙されてひどい目にあう可能性が全くない状況では信頼は必要とされない(命題1)」というものである。
では、社会的不確実性が高い場合、どうするのか。
それが2つ目の命題である。社会的不確実性が生み出す問題に対処するために、人々は一般に、コミットメント関係を形成する(命題2)」である。
コミットメント関係とは、社会心理学でしばしば用いられる専門用語であるが、ここではひとまず特定の相手との継続的な関係と捉えておけばよいだろう。
特定の相手とは継続的な関係を形成すれば、協力し合うことが互いの利益となり、反対に相手を裏切ることは長い目で見れば、自身に損害をもたらすことになる。
また、特定の相手との間に継続的な関係を形成することは、相手の意図を推測するための情報の蓄積を生み、特定の状況下で相手が私を裏切るかどうかを正確に推測することができるようになる。
結果的にコミットメントの形成社会的不確実性を低め、互いに安心を提供しあうことへと発展していく。
ただし、コミットメント関係機会コストを生み出す(命題3)」
すなわち、特定の相手とだけ関係を継続することは、別の相手と交流を持っていたら得られたかもしれない利益を手放してしまう可能性を示唆する
これが機会コストである。
したがって、機会コストが大きい状況では、コミットメント関係にとどまるよりも、とどまらないほうが有利である(命題4)」
すなわち、別の相手との交流を持ったほうが大きな利益を得られそうな状況では、特定の相手との間にだけ関係を形成していると、みすみす大きな機会を逃してしまうことになるのである。
しかし、「低信頼者(他者一般に対する信頼の低い人)は、高信頼者(一般的信頼の高い人)よりも、社会的不確実性に直面した場合に、特定の相手とのコミットメント関係を形成し維持しようとする傾向がより強「低信頼者(他者一般に対する信頼の低い人)は、高信頼者(一般的信頼の高い人)よりも、社会的不確実性に直面した場合に、特定の相手とのコミットメント関係を形成し維持しようとする傾向がより強い(命題5)」
特定の相手との関係を離れて、別の他者と関係を結ぶ場合には、その相手から裏切られるかもしれないというリスクがつきまとう。
そのような状況では、他者一般に対する信頼の低い人は、敢えて新しい他者と交流を持とうとせず、たとえ機会コストが大きくとも、既存のコミットメント関係にとどまろうとするのである。
反対に、他者一般に対する信頼が高い人は、この一般的信頼が、既存のコミットメント関係からの「離陸」に必要な「推力」を提供する「ブースター(補助推進装置)」の役割を果たすことになり、新しい他者との関係の形成がうながされる。
結果として、社会的不確実性機会コストの双方が大きい状況では、高信頼者が低信頼者よりも大きな利益を得る可能性が存在する(命題6)」
このように信頼の解き放ち理論では、社会的不確実性機会コストのいずれも高い人が、結果としてより大きな利益を得る可能性を予測する。
すでに述べたように、一般的な常識に反し、山岸らが行った日米比較質問紙調査では、アメリカ人のほうがに本人よりも他者一般に対する信頼の程度が高かった。
しかし同じ調査で、本人は、アメリカ人に比べ、特定の相手との関係(コミットメント関係)を維持し、その関係を利用することで相手から何らかの利益(効用)が得られると信じている度合いが強いことも明らかになっている。
すなわちこのことから、日本社会はアメリカ社会に比べ、固定したコミットメント関係が社会の中で重要な位置を占め、それによって社会的不確実性低くすることができるために、特定の関係にととどまる傾向が強く、それゆえにコミットメント関係を離れた他者一般に対しては信頼性が育ちにくい土壌があると推測できる。

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