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インターネットにおける行動と心理 2

インターネットにおける行動と心理 2

(2)インターネットの影響モデル1-技術決定論の立場からー

インターネットの普及初期には、インターネットの技術的な設計により、利用者の行動や心理が必然的に変化するという「技術決定論」の立場から、インターネットの影響をモデル化しようとする試みが盛んに行われた。
ジョインソンは、このような技術決定論に基づくアプローチとして、①「手がかり濾過アプローチ」と、②「自己注目アプローチ」の2つを紹介している
①「手がかり濾過アプローチ」として分類される研究は、インターネット・コミュニケーションが視覚的匿名状態で行われるという特徴から、見た目や動作といった社会的手がかり(非言語的な情報)が伝達されにくいという点に注目している。
そして、このような社会的手がかりがコミュニケーションから「失われる」と、相手がそこに存在するという感覚が希薄化し(社会的存在感の低下)、自分自身を責任ある個人として意識しにくくなり(没個性化)、社会的文脈や規範に沿って自らの行動を統制しようとする力が弱まるといった心理プロセスが生じる。
その結果、インターネットの利用者は、社会規範にとらわれない脱抑制的な行動を示すようになると考えられている(たとえば、対等な参加の促進、極端な意見の表明、敵意的な言動の増加、自己開示の増加)。
もう1つの②「自己注目アプローチ」も、インターネット・コミュニケーションが持つ視覚的匿名性という特徴を同じく重視している。
私たちは、自分が他者から見られ、評価されていると強く感じるほど、他者から観察可能な自己の外面(公的自己)を強く意識する
そのため、視覚的匿名性が高い(お互いの様子が見えない)インターネット・コミュニケーションでは、公的自己意識は低下しやすくなり、人目を身にして自分の行動を調整する意欲も減退する。
一方、視覚的匿名性が高い状態では、周囲の環境から切り離されることで内省的になり、自己の内面(私的自己)について考える機会は多くなる。
その結果、自分の個人的な規範や欲求に沿った行動が増える。
つまり、自己注目アプローチでは、視覚的匿名性によって、インターネット利用者の公的自己意識の低下と私的自己意識の上昇が同時に起こり、その結果、社会的な規範に捉われず自分の気持ちに従った、脱規範的な行動が増加すると考えられている。

(3)インターネットの影響モデル2-技術決定論を超えてー

しかし、このような技術決定論に対しては、その後、多くの批判が寄せられた。
たとえば、手がかり的濾過アプローチは、「インタネット・コミュニケーションでは、社会的手がかりは途中で濾過され、相手には伝わらない」ことを前提にしているが、このような考え方は人間行動の柔軟性を過小評価している。
インターネット・コミュニケーションの利用者は、視覚的匿名性という環境上の制約を補うために、対面以上に社会的情報の交換を活発に行うこともある。(1995)
また、どちらのアプローチも「視覚的匿名性は、一様に脱抑制的な行動を増加させる」と予想しているが、この点についても批判がある。
「没個性化効果の社会的アイデンティティモデル(SIDEモデル)」に基づく研究では、視覚的匿名性の存在が常に社会規範から逸脱するような脱抑制的な行動を誘発するわけではなく、コミュニケーションが行われる文脈を利用者がどのように認識しているか、また、どのような動機づけが高まっているかによっても、生じる意識や行動のパターンは異なることが示されている(1992)。

つまりこれらの研究結果は、技術決定論から予測されるほど、インターネットの技術的設計と利用者の行動の関係は一義的ではないことを示唆している。
さらに、技術決定論では、インターネット利用者は社会的文脈手がかりが自動的には伝わらないというインターネット・コミュニケーションの特徴をあらかじめ理解した上で、自分の感情を偽りたいときには、対面よりインターネット・コミュニケーションを戦略的に選択することも可能である。
この場合、インターネット・コミュニケーションの場で見られる欺瞞行動は、技術的な設計から生じた不可避的な行動ではなく、利用者が意図的に選んだ行動であると考えるのが妥当であろう。
メディア利用の影響に対するこのような考え方は「合理的行為者アプローチ」と呼ばれる。
以上の議論を踏まえて、ジョインソンは、インターネットが人の行動や心理に及ぼす影響を理解する、より包括的なフレームワークを提案している。
まず、インターネットという新技術に基づくコミュケーション環境から利用者が新しい可能性を読み取り(利用者側の要因)、自らの目標の達成を助けるメディアとして、インターネットの利用が(意識的・無意識的に)選択される。
そして、インターネットを利用して実際にコミュニケーション活動を行うことにより、利用される技術の設計上の特徴、その技術を用いる利用者の特徴、コミュニケーションが行われる場の文脈的特徴が相互に作用しあい、さまざまな心理的効果(たとえば、自己意識の変化)行動的結果(たとえば、脱抑制的な行動)が生まれる。
なお、インタネット・コミュニケーションの中で生じる心理的・行動的結果は、利用者の事前の予測にある程度一致する場合もあるが、その場に生じるダイナミクスの影響により、予測不可能で創発的なものになる場合もある。
しかし、どちらの場合も、インターネットを用いたコミュニケーションの結果は利用者の認識に影響を与え、次回のメディア選択の際に参照される。
このようにインターネット利用の選択と結果は、持続的で循環的な影響プロセスの中にあるといえる。

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