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インターネットにおける行動と心理 3

インターネットにおける行動と心理 3

(4)テーマ別の研究動向

ジョインソンは、2000年代前半までに行われた主要なインターネット研究をネガティブな現象に着目したものとポジティブな現象に着目したものに二分しているが、これを研究テーマ別に再整理すると、❶「対人的つながり」、❷「対人行動」、❸「自己表出」、❹「情報閲覧」などの領域に分けることができる。
❶「対人的つながり」に関する領域では、日々の生活でのインターネットの累積的利用が、個人の社会的ネットワークの形成や維持にどのように影響するのかという問題が検討されている。
インターネットでは、非同期コミュニケーションも可能であり時間や場所による物理的制約を受けにくい。
また、匿名性の状態を作り出すことが対面に比べて容易なことから、コミュニケーションを行う際の心理的敷居も低い。
そのため、インターネットを活用すれば、あまりコストをかけずに他者とつながりを持つことが可能になる。
しかし、ターネットの普及初期に行われた調査では、インターネットをコミュニケーション目的で利用すればするほど、家族とのコミュニケーション量や、地元および遠方の友人との社会的ネットワークの規模は縮小し、孤独感が増すというネガティブな結果が示された(1998)。
これは「インターネット・パラドックス」と名づけられ大きな反響を呼んだが、その後に行われた後続調査ではそのような影響は消失し、インターネットを使うほど家族や友人との対面コミュニケーションの量が増え、実際に会って話をする友人ネットワークの規模も拡張するというポジティブな結果に転じた(2002)。
なお、このような変化が生じた理由としては、インターネットの普及状況や提供されるサービス内容が向上したことで、インターネット・コミュニケーションの効果が顕在化したことが挙げられる。
近年では、インターネットが、既存の社会的ネットワークを強化するだけでなく、公的・私的を問わず、新しいつながりを構築する上でも大きな効果を発揮することを示す研究が増えている。
マーク・グラノヴェッターは、緩やかな社会的ネットワークが、価値ある情報の伝播に重要な役割を果たしていることを指摘し「弱い紐帯の強さ」を示したが(1982)インターネット・コミュニケーションはこのような弱い紐帯を構築するときにも強い効果を発揮する。
しかし、インターネット・コミュニケーションを利用することで、すべての人が社会的ネットワークを拡張できるわけではなく、利用者側の要因が効果の程度に影響してくるという指摘もある(2002)。
また、インターネット・コミュニケーションを通した対人接触に過度にのめり込み、社会生活に深刻な支障をきたす「インターネット依存症」になる例も、少数ながら報告されている。
続く❷「対人行動」の領域では、インターネット・コミュニケーションを行っている最中に、個人は他者に対してどのような振る舞いやすいのかという問題が検討されている。
この領域におけるネガティブな現象としては、「フレーミング(敵意のある発言)」「有害なアドバイス(問題行動の肯定)」などの反社会的行動が挙げられる。
インターネット・コミュニケーションでは、対面の比べて反社会的行動を含む脱抑制的な行動が生じやすいことがこれまでの研究でたびたび示されている。
そして、そのような脱抑制的行動が生じるプロセスは、インターネットの視覚的匿名性という特徴から説明されることが多い。
しかし、インターネット・コミュニケーションにおいて脱抑制的行動が必ず生じるわけではなく、コミュニケーションが行われる文脈や、個人の動機や特性を考慮することの重要性が指摘されている。
一方、ポジティブな現象としては、「援助行動」などの向社会的行動が挙げられる。
Q&A型の知識共有サイトに代表されるように、インターネット上ではさまざまな形の「援助行動(サポート提供)」が実行されている。
これらのサポートサイトの多くは質問者とは面識のない人からの無償の情報提供によって成り立っており、見知らぬ者同士の緩やかな社会的ネットワークの形成が多様な情報資源に接する確率を増大させるという好結果を生んでいる。
またインターネット上では、このような情報的サポートだけでなく、受容や共感といった情緒的サポートも数多く提供されている。
❸「自己表出」の領域では、インターネット・コミュニケーションを行っているとき、個人はどのようなかたちで自己を表出しやすいのかという問題が検討されている。
インターネットでは、非同期的ツールの使用や社会的手がかりの伝達制限および匿名性の選択可能性から、対面に比べ、自己に関する情報の戦略的管理が容易である。
また、匿名性の存在は、コミュニケーションに対する恐怖心や不安を和らげ、私的自己意識を高める働きをする。
そのため、インターネット・コミュニケーションでは、対面においてはあまり表出されない自己の側面が、表面化する可能性がある。
なお、自己表出の領域のネガティブな現象としては、自己に関する情報の真偽が懸念される。
しかし、実証研究の結果、対面場面で築いた交友関係に比べ、インターネット上で築いた交友関係のほうでウソが生じやすいという全般的な傾向は見られず、年齢と身体的特徴に関してウソをついたことがあると答えた人の割合のみが高かった(2001)。
また、複数の人が匿名で参加する電子掲示板などでは性別の偽装が見られた。
この結果には、インターネットの視覚的匿名性という特徴が関係していると考えられる。
一方、自己表出の領域で見られるポジティブな現象としては2つのものが考えられる。
第1に、対面コミュニケーションでは表に出せない、隠された自己の表出が容易になる点が挙げられる。
たとえば、インターネット・コミュニケーション環境では、対面に比べ、自分自身が「本当の自分」と考える側面によりアクセスしやすく(2002)自分の個人的な情報を他者に打ち明ける「自己開示」行動も起こりやすい(2001)。
さらに、インターネット上のに存在するコミュニティで、現実社会(リアル・ワールド)では隠している自己の側面を表出したことがきっかけとなり、自己受容や、現実世界での適応が促進されたという報告もある(1998)。
第2のポジティブな現象としては、インターネット・コミュニケーションでは、肯定的な自己像を相手に積極的に提示できる可能性が広がる点が挙げられる。
自己呈示とは、自己に関する情報を他者に伝える際に意図的な調整を行い、特定の印象を戦略的に他者に与えようとする行為を指す。
自己呈示に関しては、人がどのような場面でインターネットを自己呈示に利用するかといった、利用者の戦略性に注目した研究がしばしば行われている(2000)。
❹「情報閲覧」の領域では、インターネット・コミュニケーションの場において、個人はどのような情報に接触しやすいのかという問題が研究されている。
この領域におけるネガティブな現象としては、法律あるいは、公序良俗に反するような情報へのアクセス可能性の増加が挙げられる。
そして、このような現象が生じる理由として、インターネット環境では、対面に比べて物理的・心理的な抑制を感じにくいことが指摘されている。
一方、この領域におけるポジティブな現象としては、閲覧者のクオリティー・オブ・ライフ(QOL)を向上させるような情報(例えば、健康情報)へのアクセス可能性の増加が挙げられる。
インターネットによる情報検索は、情報量の多さと利便性という物理的効用を利用者にもたらす。
また、インタネット上では、自分の心が傷つくかもしれない情報でも気軽に見ることができるという心理的効用も確認されている(2001)。

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