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これからの社会心理学 2

これからの社会心理学 2

(2)進化論的アプローチ

社会的認知アプローチは、人間がどのような心の機能を持ち、それがどのようなプロセスを経て働くかについては教えてくれるが、なぜ人間がそのような機能を持っているかについては教えてくれない。
こうした疑問に一貫性のある答えを用意してくれるものとして、近年大きく期待されているのが進化論的アプローチである(長谷川、2005)。
すなわち、進化論的アプローチとは、現在の(人間を含む)生物が持つ身体的形質や行動傾向が、その生物が暮らしたかつての生活環境への適応の結果として自然選択されてきたものであるのと同じように、人間が持つ心の機能もまた進化的適応の産物として捉えるアプローチのことである。
これまでばらばらに検討されてきた人間の持つ数々の心の機能を、「適応」という概念のもとに包括的に理解しようとする取り組みと言うこともできる亀田・村田、2010)。

心理学の中に進化論的な考え方を採り込むという発想自体は新しいものではなく、実は進化論の生みの親であるダーウィンも、『種の起源』(1859)の中でその可能性について触れている。
しかし社会心理学において、その知見の数々を、進化的適応という概念のもとで統一的に理解しようという試みは始まったばかりであり(亀田・村田、2010)、今後の発展が期待されている。
その背景には、人間(や霊長類)が適応すべき環境は、当初、進化論で想定されていたような自然環境ではなく、むしろ社会環境だったのではないかという、近年の進化心理学者たちの主張が大きな役割を果たしている。

霊長類、とりわけ人間の脳(特に大脳新皮質)が大きくなったのは、集団サイズが大きくなり、恒常的に接する他者の数が増えたためという仮説(社会脳仮説)が提供されている。
他者との集団生活は過酷な自然環境を互いの協力によって切り抜けるという点で有効な方略である。
しかし他方で、集団生活においては、同じように「心」を持つ相手に一方的に不利な立場に置かれることなく協力関係を結ぶという、複雑な課題に対応することが要求される。
しかも集団のサイズが大きくなれば、その分だけ調整すべき人間関係も増えることになるため、社会環境において必要とされる知性は、自然環境を相手にする場合以上に高度なものになると考えられる。
すなわち、人間が持つ大きな脳とそれを基盤とする心の機能は、人間が社会的動物であるがゆえに自然選択された進化的適応の産物であるというのが、社会脳仮説の主張である。
この考えに基づけば、社会心理学において明らかにされてきた人間の社会的行動や、その背後にあると推測された数々の心の機能は、社会環境における適応(生存率や繁殖率の増加)を高めるために自然選択されたものとして包括的に解釈できるはずである。
社会脳仮説は、後述する脳神経科学にも大きな影響を与えている。

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