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知覚・認知心理学とは―考えることの科学ー2

知覚・認知心理学とはー考えることの科学ー 2

3.「無意識的に考える」

われわれは三次元の奥行きを持った世界に生きている。
そして、二次元網膜画像から三次元知覚世界を脳内で作り出している。
さらに、視覚系は、外界のモノやその配置に、安定性や単純性、不変性を求めている。
つまり、節約率の原理である。
対称性はその特性を備えている。
対称性の中でも、円形は、対称軸が無限に存在するという意味で、対称性の極みである。
したがって、われわれは、二次元の楕円画像から三次元の円形を抽出する傾向が強い。

無意識的に考えることでも、感覚や知覚、パターン認知などは、後述のように感覚器官に入ってきた信号をもとに情報源を推測することであり、これは先に述べた逆問題を解いていることになる。
視覚認知でいえば、網膜上の画像から、外界の事物の形や色を推測することであり、これは逆問題、それも不良設定問題を解くことになる。

日々経験することの例をもう一つ挙げよう。
例えば、モノの色を知覚することを考える。
色知覚は、人間を含めた生体の機能であって、光に色がついているわけではない。
モノに光(太陽光や照明光)が当たって、それが反射され、その反射光が眼に入り、脳で、それを復元することにより、色知覚が成立する。
そこで、そのメカニズムを単純化する意味で、ax=bを活用する。
色知覚では、aは照明光の色成分(正確には照明光スペクトル)、xはモノの色成分(反射率スペクトル)、bは目に入ってくる光の色成分(入射光スペクトル
色知覚では、眼に入ってきた光bをもとに、モノの色成分xを復元している、つまり、bをもとにxを推測しているのである。
これが、不良設定問題であることはすぐにわかるだろう。

上記の例のように、知識は無意識的に考えることの顕著な一例であるが、これは、19世紀の物理学者・生理学者で、光の3色説でも有名なヘルムホルツがすでに指摘している。
ヘルムホルツは、その著書『生理光学』の中で、知覚は一種の解釈であり無意識的推論(unconscious inference)の結果であると述べている。
その説明では、無意識的推論には、経験・学習が関与しているという主張であり、イギリス経験主義の色合いが強いが、学習をより広い意味で捉え、進化の過程で獲得された特性も含むと考える方が適切ではないだろうか。

4.「意識的に考える」ことから「無意識的に考える」ことへ

ストループ効果(Stroop effect)という認知心理学上よく知られた現象がある。
課題に関係ない「文字の読み」という認知活動は、これまで、日常での学習によって培われ、いわば、自動的に働いてしまう。
その結果、意識的に色名を読もうとしても、無意識的に文字名を読んでしまうのである。
このような、学習や経験の結果、意識的に考えていたことが、無意識的に考えるようになることは、例えば自転車の運転のような技の記憶出よくみられる。

5.「考えること」の基本構造ー情報処理システムー

これまでは、人間の特色である「考えること」という機能に関して説明し、認知心理学とは、「考えることの科学」であると述べてきた。
このような機能を可能にする基本構造(アーキテクチャ)について説明しよう。
ここでのキーワードは「情報処理システム」である。

「考えること」に関して「情報」の概念は重要である。
考える対象が何であるか、そしてそれをどのように扱うかの方法論に関わるからである。
「情報」とは、心の働きに変化を与えるものの総称であり、「情報」を特定することで、「考えること」の対象が明確になる。

「情報」が科学として注目されたのは、20世紀も四半世紀を過ぎたあたり、イギリスのチューリングの提唱したチューリングマシンが1つのきっかけであろう。
それは、情報の表現(representation,基本的には、記号表現)情報の受け手の内部状態、および操作(operation)モデル化した、汎用の「情報処理モデル」である。
肝心なのは、「考えること」を理解するためには、幽霊のような家たちのない「情報」を、心の内部で、何らかの表現として捉え、それを操作することで、心の内部状態が変化する、という視点を有することにある。

ところで、情報処理システムの話に入る前に、そもそもシステム(system)とは何かについて、簡単に触れておく。
システムとは、系統、体系、組織、制度を表し、その反対語はカオス(chaos:混沌)と呼ばれる。
システムは、数々の異なった多数の要素が①ある所期の目的を達成するために、②相互に関連しあい、③集合体として統一された機能を果たすもの、と考えられる(石井ら、1984)
システムは、われわれの身の回りに数多く存在する。
大きなシステムは、その下に、システム(サブシステム)を持ち、階層構造を有している場合が多い。
なお、サブシステム装置、機器の一部分であり、とりはずし可能で、独立な場合、モジュール(module)と呼ばれる場合もある。

コンピュータに代表される「情報処理システム」は、基本的には、入力・処理・出力といった、階層的なサブシステムを有する。
すなわち、情報を収集し(入力サブシステム)、内部表現を作り出し、加工・分析・記録し、新たな情報を作り出し(処理システム)、伝達・動作る(出力サブシステム)といったサブシステムからなる基本構造(アーキテクチャ)を一般に情報処理システムという。
コンピュータでは、ハードウェア(物理的機構)と基本ソフトウェア(論理的機構)に、応用ソフトウェアが組み込まれて、情報処理が構成される。

情報処理システムでは、符号化(encoding)復号化(decoding)という概念が重要である。
符号化復号化は、本来通信システムで使用された概念である。
光ファイバー通信システムの概要であるが、情報源の画像を光信号に符号化し、その信号を他所に伝達し、受け手で光信号から画像へ復号化して情報を復元する。

このような基本的な特徴は、人間にも当てはまる。
つまり、人間もまた、入力・処理(理解)・出力システムを備えた情報処理システムといえる(これを、認知の情報処理アプローチと呼ぶ場合もある)。

人間を情報処理システムとして捉えることで、他の情報処理システムとの対比が可能となり、人間の認知の特性が理解できる。

「考えること」では、意識的に考えることと無意識的に考えることとが、相互に協力しながら働いている。
別な言い方をすれば、無意識的に考えることとは、自分を含む世界を形作る機能であり、意識的に考えることとはその世界を語る機能ともいえる。

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