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推論―論理的に考える、一から十を知るー1

推論―論理的に考える、一から十を知る―1

【キーワード】
演繹的推論、帰納的推論、三段論法、ウェイソンの選択課題、実用的推論スキーマ、仮説検証、ベイズ規則

「問題解決」「判断と意思決定」を扱った。
これらは、意識的に考えることの典型例であるが、その背後には、推論という認知機能が備わっている。

1.推論の様式

推論とは、いくつかの前提が与えられたとき、それから、何らかの結論を導き出す認知機能である。
この推論機能は、大きく分けて、2種類考えられる。
1つは、演繹的推論(deduction)である。
前提が真であるとき、論理規則に則り、妥当な結論を導き出すのが演繹的推論である。
そのプロセスは演繹的論証ともいわれる。
演繹的推論では、結論は、内容は別として、論理的に妥当であるか否かのいずれかである。
いわゆる、規範理論としての論理学を基盤としており、科学論文の論理展開や数学の証明問題などは、演繹的推論を基礎としている。
ただし、導き出される結論は、新たな知識を生み出すものではなく、前提に内包されている事項を確認することになる。
一方、帰納的推論(induction)は、前提から、新たな仮説を結論として導き出す認知機能である。
そのプロセスは帰納的論証ともいわれる。
帰納的推論の場合、結論は確定的ではなく、つまり、真・偽の2値ではなく、その妥当性(仮説の強度)は確率的である。
さらに、結論は、前提に内包されているものではなく、新たな知識を生み出す。
意味情報(semantic information)を増加させる(1994)という表現もできる。

2.演繹的推論

古代ギリシャのアリストテレスの時代から、西洋では、演繹的推論こそが、合理的思考の最も高次なものと信じられていた。
それを踏まえると、演繹的推論課題は、人間の合理性を理解するために、認知心理学者が使用できる、基本ツールの一つと考えられる。
そして演繹的推論を研究するツールの一つが、三段論法(syllogism)である。
三段論法は、2つの前提と1つの結論からなる。
真なる前提から論理規則に則り結論が論理的に導かれる場合、結論は妥当(valid)である、という。

三段論法には、条件三段論法定言三段論法などがある。
条件三段論法とは、前提文に「もし・・・ならば」(if-then)と、条件が付く場合であり、定言三段論法とは、前提文や結論に「すべての」や「いくらかの」といった量的な意味を有する用語や記号(量化子(quantifier)という)が付帯するものである。

(1)条件三段論法

条件三段論法は、基本的には、2つの真なる前提(大前提、小前提)とそれから導出される1つの結論からなる。
大前提では、「pならばq」といった条件式で表され(p、qには具体的な事項が入る)pを前件、qを後件という。
小前提には、pやqの肯定、否定に関する記述が入る。
これによって、前提文は、前件肯定、前件否定、後件肯定、後件否定の4種類に分類される。
大前提:もし今日が月曜日ならば、認知心理学の授業がある。
①前件肯定 小前提 :今日は月曜日だ。
②前件否定 小前提 :今日は月曜日ではない。
③後件肯定 小前提 :認知心理学の授業がある。
④後件否定 小前提 :認知心理学の授業がない。

①の場合、「認知心理学の授業がある」という結論は、妥当であり、論理学では、肯定式(modus ponens:前件肯定規則)と呼ばれる。
論理学では、否定式(modus tollens:後件否定規則)と呼ばれる。
一方、②で「認知心理学の授業はない」という結論を考えたならば、これは論理的には妥当ではない。
これを前件否定の錯誤という。
同様に、③で「今日は月曜日である」という結論も論理的には妥当ではない。
これを後件肯定の錯誤という。
いずれの場合にも、ほかの日にも、認知心理学の授業があるかもしれないからである。
以上の関係を、集合論で考案されたオイラー図を使って表すと、わかりやすい。
この場合、pはqに内包される。
これは、実質含意(material implication)と呼ばれる。
以上は論理学上での、つまり、規範理論上の話であるが、知覚・認知心理学では、条件三段論法で導かれた結論が妥当かどうかを、人間がどのように判断するかが検討すべき問題となる。
エバンズ(1993)が先行研究をレビューした結果によれば、それぞれ妥当と判断した場合は、肯定式が約98%、否定式が約60%、前件否定、後件否定ともに約40%になるという。
以下の例で、考えてみよう。
先生が教室で、「問題が解けた人は手を挙げなさい」といったので、ある生徒が「手を挙げた」。
先生は、当然、その生徒は問題が解けたと考えるだろう。
だがこれは、論理学上では、後件肯定の錯誤に当たる。
つまり、
大前提 :問題が解けたら手を挙げなさい
小前提 :手を挙げた
結論 :問題が解けた=後件肯定の錯誤
となる。
しかし、日常場面では、このような例はかなり多い。
これをどう考えるのか。
先生にとってみれば、「問題が解けたら、かつ、その時に限り、手を挙げなさい」という意図であろう。
これは、論理学上では、大前提が「pならばq」かつ「qならばp」に相当し、双条件文(biconditional)と呼ばれる状況である。
この状況は、オイラー図では、pとqとが一致する場合であり、実質等値(material equivalence)と呼ばれる。
そして、双条件文では、後件肯定も含め、前述の4種の推論形式では、結論はすべて妥当となる。
したがって、もし通常の条件推論問題で、実験参加者が双条件文的解釈をしていたならば、全ての形式で妥当とした割合は一定になる。
しかし、前述のように、そうならなかった。これが第一の問題である。
第二の問題は、実質含意でも実質等値でも肯定式と否定式は妥当な結論を導いているはずだが、参加者は、否定式に対して、「妥当である」という判断が少ないということである。
認知心理学者は、これらの問題を説明するモデルを提示しなくてはならない。
レアードメンタルモデル理論オークスフォードチェイスターによる確率モデル理論などが、その説明をしている。

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