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知覚のしくみⅡ-意識にのぼる世界とはー1

知覚のしくみⅡ-意識にのぼる世界とはー1

1.知覚におけるトップダウン処理

(1)視知覚におけるトップダウン処理

パンデモニアム理論に従うならば、要素が同じだから、同じ文字を担当する認知デーモンが活性化されて、決定される文字をまた同じになるはずである。
ところが、人はそう認識しない。
この例は、私たちの文字認識が、網膜像からの個々の知覚的特徴の抽出、文字の認識、単語の認識へと、つまり、低次(入力に近い処理)から高次(意識に近い処理)へと段階を追って積み上げ式に進む処理(ボトムアップ処理:bottom-up processing)だけでは説明できないことを示している。
”THE CAT”と読めるのは、より高次の意味処理に関わる単語の知識によって、文字認識が調整されたからだと考えられる。
このように、知識や文脈(context)、あるいはこれらを用いた、より高次の処理結果が低次の処理で用いられることをトップ・ダウン処理(top-down processing)と呼ぶ。
グループ化のはたらきが弱まるためだと考えられる
要素同士の距離や配置を逆さまにしても変わらないので、ボトムアップ処理ではこの違いは説明できない。
しかし、先ほど見えていた動物は普通、上下逆に見ることはできないので、絵を逆さまにするとトップダウン処理は弱まる。
すなわちこの現象は、知覚の体制化にモノの認識過程が関わっている証拠といえる。

(2)超知覚におけるトップダウン処理

知識や文脈が知覚に影響するのは、視覚に限ったことではない。
例えば、通常、私たちの身の回りでは多くの音がしており、話し声がかき消されることもしばしばある。
しかし、会話の一部が騒音でかき消されても、私たちは、ほぼ支障なく言葉を聞き取ることができる。
例えば、朝のあいさつで「お*よう」の*部分が雑音で消されたとしても、私たちには「おはよう」と聞こえる。
これは、音韻修復効果(phonemerestoration effct)呼ばれる現象である。
この現象を最初に紹介したワレンは、その後の研究で、次のような4つの文を聞かせた。
この研究の面白さは、文意を決める鍵となる単語が、音韻修復が行われるべき位置の後ろにあるという点にある。
対応する日本語の例を挙げるならば、「パン*のシャンシャンに会いに行こう」「パン*で食パン買ってきて」というような分になるだろうか。
ワレンの研究結果から推測すると、前者は」「パンダ」、後者は」「パン屋」に来超えるに違いない。
ワレンらの用いた文を普通の速度で読むと、*から最後の単語まで1秒程の時間がかかる。
1秒も後に聞こえる単語によって修復される音が変わると、単とも不思議な現象であるが、これもトップダウン処理のなせる技である。

2.経験による知覚世界の違い

(1)都市の経験と知覚

「エイムズの部屋」
この部屋は左奥に行くほど奥行きが長く、床は低く、天井は高くなる作りになっているにもかかわらず、真正面から見ると長方形の部屋のように見える構造になっている。
さらに正面の壁には真正面から見るとちょうど長方形の普通の窓に見えるよに、台形の窓が描かれていて、部屋が長方形だという印象を強めている。
「ミュラーリヤー錯視」
幾何学的錯視の知覚にも関係しているといわれている。
ポンゾ錯視に関連して説明したように、網膜上に同じ長さの線分であれば、三次元空間は奥にある線分の方が長い。
その解釈が無意識のうちに二次元の線画の知覚にも影響を与えて、外向きの矢羽根の方を長く感じるというのである。
先ほどのエイムズの部屋と同様、生活環境の違いによってミュラーリヤー錯視の生じやすさが違うことを示すデータも示されており、異論はものの、経験は、この錯視が生じるメカニズムの少なくとも一端に関わっていると考えられる。

(2)個人的な視世界

エイムズの部屋の錯視については、知識のほかに、見る人が抱いている感情も、登場人物の大きさの知覚に影響するという報告もある。
ディオンらが行った研究では、観察者が女性で、男性のパートナーが部屋の中にいるとき、パートナーに抱いているポジティブな感情(愛や好意、信頼など)が強いと、見知らぬ人が部屋にいるときに比べて大きさの歪みが小さく感じられた。
これらの例は、個人が経験する知覚世界が、それまでの経験や感情によって、その人独自の、個性あふれる世界になっていることを示している。

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