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注意と認知ー限られた資源を生かすー1

注意と認知―限られた資源を生かす―1

1.注意とは
2.注意の理論
(1)フィルター理論

人がたくさん集まるパーティー会場では、自分が会話している相手が話している内容は理解できるが、それ以外の人が発する言葉は聞き取れない。
このような例のように、身の回りにあふれる多くの情報の中から、自分にとって必要な情報を取り出す機能選択的注意(selective attention)と呼ぶ。

1950年代、チェリーは、両耳分離聴(dichotic listening)という実験方法を使って、このパーティーの状況に対応するような、聴覚を用いた選択的注意の研究を行った(1953)。
彼の研究では、実験参加者はヘッドホンを装着し、両耳から異なるメッセージを追唱、すなわち、聞こえてくるメッセージをオウム返しに繰り返す。
このような実験を行った後で、参加者に追唱していない方のメッセージについて覚えていることを聞いたところ、人の声であることや性別などは報告できたが、話されていた言語や、出てきた単語等はほとんど報告できないことがわかった。

ブロードベントは、これらの実験結果を踏まえて、フィルター理論(filter theory)を提案した。
この理論では、感覚器を通して入力された情報は、最初、その全てが並行して処理される。
そしてその後、フィルターによって、注目した物理的な特性(聞こえている耳、声の高さ、など)を基準に情報がふり分けられ、選ばれた情報だけが、意味処理などのどのより進んだ処理を受けると仮定された。
つまり、知覚認知プロセスのある程度初期の段階で、情報の選択が行われると考えたわけである。

ブロードベントフィルター理論を提唱した著作で人間を情報処理器として理解するという論を展開し、これは、ちょうど同時期に発表されたミラーチョムスキーニューウェルらナイサーなどの著作とともに認知革命の火付け役となった。
なお、フィルター理論のように、それまで並列的に処理されていた情報の一部が選別されて、その後処理を受けるシステム設計のことボトルネック(bottleeneck)と呼び選択的注意の性質を表す用語としてよく用いられる。

(2)注意の減衰理論と後期選択理論

ところが、その後の研究で、フィルター理論では説明がつかない現象が報告された。
どうやら人は、両耳で聞いた音について同時に高度な意味処理を行うことが可能であるし、また、物理的な特性ではなく、意味による情報のふるい分けもできるというのである。
例えば、グレイウェダーバーンは、文を構成する単語をバラバラにして、参加者の左右の耳から交互に聞かせた。
つまり、右耳に「mice-five-cheese」、左耳に「three-eat-four」というように。
その後、聞いた単語を再生してもらったところ、「mice-eat-cheese」というように、意味が繋がる単語のひと塊になって再生されることが多かった。

また、トリースマンは小説の文章を使って、文章が聞こえてくる耳を途中で入れ替えるという実験を行った。
例えば、はじめは左耳から小説の朗読が、右耳から無意味な単語の羅列が聞こえているのだが、ある時点で、参加者には知らされずにそれが入れ替わるのである。
左耳から聞こえる音声を追唱するように教示されている場合、入れ替え時点の後では、追唱すべき音声は無意味な単語の羅列になるのだが、参加者の中には、内容的に繋がりのよい、本来は無視すべき音声に追唱の対象が変わってしまう人もいた。

トリースマンは、これらの研究結果を説明するために、注意の減衰理論(attenuation theory)を提案した。
ブロードベントフィルター理論では、知覚認知の初期段階で情報の選択が行われてしまうため、フィルターを通らなかった刺激(両耳分離聴実験では、追唱しない方の耳から聞こえた刺激)に対しては、意味処理は行われないと想定される。
これに対して、減衰理論では、フィルターは完全に刺激を遮るわけではなく、その刺激についての信号を弱めるはたらきをすると想定する。
信号が弱くなっても意味処理は行われるので、意味に基づく追唱や再生を行うことも可能ということになる(ただし、信号が弱められずにフィルターを通過した刺激に比べると、難しくはなる)。

パーティー会場では、会話の相手以外が発する、普段は聞き取れない言葉であっても、例えば自分の名前が聞こえてきたりする。
減衰理論を使うと、このカクテルパーティー効果(cocktailparty effct)と呼ばれる現象を説明することもできる。
会話の相手以外の声の信号はフィルターにかかって減衰しているが、意味処理は行われる。
言葉の意味が意識にのぼるためには、その意味を担当するユニット(神経細胞群を仮定すればよい)の活性化が、ある基準よりも強くなくてはいけないと仮定しよう。
通常の場合、減衰してしまった声の信号では、対応する意味ユニットを基準に達するほど強く活性化させられないため、意識にはのぼってこない。
ところが、自分に関わりがあったり、生存の維持に重要だったりする言葉については、意識にのぼるための規準が低くなっていると想定される。
そうであるならば、ほかの言葉は聞こえないのに自分の名前だけは聞こえる、という現象が生じるわけである。

(3)視覚的探索と特徴統合理論

視覚的探索(visual search)
画面を構成する要素の中に、1つだけ、他とは異なる要素(ターゲット)があるかないかを答える課題だが、ターゲットがすぐにわかるみつかり方は、ポップアウト(pop out)と呼ばれる。
これに対して注目する部分を変えながら、ターゲットを意識的に探さなくてはならないのではないだろうか。
AとBの違いは、Aでは1つの視覚的特徴だけでターゲット(左傾き)とそれ以外のディストラクタ(右傾き)が分かれているのに対して、Bでは複数の視覚特徴の組み合わせで、ターゲット(左傾きかつ黒)とディストラクタ(それ以外の組み合わせ)が決まっているということである。
Aの探索は特徴探索、Bの探索は結合探索と呼ばれ、それぞれ、探索に必要とされる処理が異なると考えられている。

特徴探索では、ディストラクタが増えても探索にかかる時間が変わらない。
これは、全ての要素が一度に並行して処理されているからだと考えられる並列処理:parallel processing)。
これに対して、結合探索ではディストラクタが増えるに連れて、探索にかかる時間が増加する。
これは、要素を少しずつ処理して、順繰りにターゲットを探していることを示しており、このような処理は逐次処理(serial processing)と呼ばれる。
特徴探索では注意のはたらきを必要としないのに対して、結合探索では、課題を行うとき、あたかもサーチライトのように、注意を動かしていると自分でも感じるのではないだろうか。

前述のトリースマンらは、次のような特徴統合理論(feature integration theory)で、これら視覚的探索の結果を説明した。
まず、方位、形、色、運動、奥行きなど、個々の視覚特徴について、それぞれ別に、網膜上の位置を示した地図が自動的に形成される。
つまり、方位地図には、各要素の位置に方位だけが描かれており、色地図には色だけが描かれている、という具合である。
この地図作成の段階は、注意を使わずに並列処理で行われるため、前注意段階(preattentive stage)と呼ばれる。
前注意段階の処理で得られた複数の地図は、いわば平行に重ねられており、垂直にスポットライトを当てれば、それぞれの地図において同じ網膜位置にある特徴全てに光が当たるようになっている。
この光の役割を担うのが選択的注意であり、注意のスポットライトがあった箇所の特徴が意識上で統合される。
特徴探索の場合には、前注意段階で形成される1枚の地図上での探索なので、注意の力を必要としないが、結合探索の場合には、複数の地図を使って探索を行わなければならないので、注意の力が必要、というわけである。

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