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注意と認知ー限られた資源を生かすー2

注意と認知―限られた資源を生かす―2

3.注意コントロールの種類

フィルター理論減衰理論特徴統合理論は、ある時点よりも前では注意を必要としない並列処理が行われ、その後、情報の絞り込みが行われるという点で、共通した視点に立つモデルといえる。

ポズナーは、この注意のコントロールについて、内発的と外発的の2種類があることを指摘した(1980)。
内発的コントロール(endogenous control)とは意図的に注意を向けることで、外発的コントロール(exogenous control)とは、外界に突然現れた光点や動きなどによって、意図に伴わず反射的に注意が向くことを指す。
内発的コントロールはトップダウンのコントロール外発的コントロールはボトムアップのコントロール、と言い換えることができる。
私たちが「注意」とひと言で呼んでいる機能の背後には、複数のメカニズムが関与していると考えられる。

4.マルチタスキングと処理資源説

マルチタスキングに関係する注意の理論として、資源理論(resource theory,1973)を紹介しよう。(処理資源説とも呼ばれる)。
資源というのは注意資源(attentional resource)、または処理資源(processing resource)のことで、情報処理を行うのに必要な心的な労力、またはエネルギーだと考えればよい。

カーネマンは、どんな課題でも使える、1種類の処理資源を想定した(単一資源理論;1973)
これに対して、遂行する課題の特性(視覚課題か聴覚課題か、など)によって、異なる処理資源が存在するという考え方もある。(多重資源理論;1979)
多重資源理論の根拠は、例えば単純な視覚課題(例:呈示される視覚刺激の形によって、XやYなど、異なるキーを押す課題)と聴覚課題(例:聞こえる音の高さを、「高い」とか「低い」とか、言葉で回答する課題)を同時に行っても、単独でそれらの課題を行うときと比べても成績が低下しない場合があるということである。

5.注意の障害

ポズナーパターソンは、注意には補足(または駆動:engage),移動(shift),解放(disengage)の3つのプロセスがあることを指摘した(1990)。
これらの3つのプロセスを分けて考えることは、注意の障害を理解する上で役に立つ。

半空間無視(neglect)は、主に右側の頭頂葉を損傷したときに生じる、自分の左側の空間や、モノの左側に注意を向けることができないという症状を指す。
視覚、聴覚などの、特定の感覚に偏らず出現することが多く、左手が麻痺していなくても自発的に動かさない等、自分の体についても無視が起こる。
この症状を持つ人に線画を模写してもらうと、絵の左側の部分を描かずに、完成したと思ってしまう。
指摘をすると描けていないことに気づくので、左側が見えていないわけではなく、注意を向けられていないのだということがわかる。

前述のポズナーらは、半側空間無視の症状を持つ人に、視野の左側(通常無視される領域)または右側に出るターゲットを検出する課題を行ってもらった(1984)。
外発的手がかりを使った実験と同様に、ターゲットが出る前に、ターゲットと同じ側、または違う側に手がかりを出して、手がかり位置と反応時間の関係を調べたところ、無視しているはずの左視野に手がかりを出したとき、同じく左視野に出たターゲットへの反応が速くなることを示した。
このことは、半側空間無視の人でも、無視してる領域に現れた手がかりを有効に利用できていることを示している。
その一方で、無視していない右視野に手がかりが出たときは、左側に出たターゲットへの反応が著しく遅くなることがわかった。
この結果から、半側空間無視では、右に向けられた注意を開放するプロセスが損なわれていると考えられている。

両側の前頭葉を損傷すると、バリント症候群と呼ばれる症状を示すことがある。
バリント症候群では、感覚情報に基づいて手や身体を動かすことが難しくなり(視覚性運動失調)、または眼球運動にも霜害が起こる。
これらに加えて注意障害の一種である、同時失認という症状が生じる。
同時失認とは、例えば空間内の同じ位置にモノが重なって呈示された場合(はさみとボールペンが交叉している情況など)、どちらか一方しか認識することができないという症状である。
何かのきっかけで他方のモノに注意が向いた場合には、それまで認識できていた物体が認識できなくなるという、不思議な現象が起こる。
同時失認もまた、いったん注意を向けたモノから注意を解放するプロセスの障害と考えられる。

頭頂葉の損傷では空間やモノ、体への注意に関わる障害が生じるのに対して、前頭葉の損傷では、トップダウンの注意コントロールに障害が起こることが知られている。
特に、当面の課題に関係のない情報を抑制する機能が低下する。
例えば、ストループ効果の課題では、表示色を読み上げるときには文字情報である色名を抑制する必要であるが、前頭葉損傷患者ではうまく抑制が働かず、色名を答えてしまうエラーが多くなる(2001)
これは、色名によるボトムアップ的な注意の捕捉を抑制する機能が低下していることと考えられる。

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