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記憶のしくみⅡ-日常記憶ー1

記憶のしくみⅡ-日常記憶ー1

キーワード
フラッシュバルブ記憶、リハーサル、自己参照効果、再生、再認、忘却曲線、検索、干渉効果、符号化特殊性原理、フォールスメモリ、スキーマ、事後情報効果

フラッシュバルブ記憶(閃光記憶:flashbulb memory)とはまさに一瞬フラッシュが光って撮られた場面のように記憶されることを意味している。

(1)覚えること:符号化の方略

フラッシュバルブ記憶のように、たった一度でも忘れられないことがある一方で、何回繰り返してもなかなか覚えられないこともある。
記憶とは、神経科学的には、脳内の神経ネットワークの変化、つまりシナプス結合の再編成であることを見てきた。
その再編成を促す要因とは何か。

一般に、目立つ情報はそれが「ポップアウト」して自動的注意が向き記憶にの頃やすいとされるが、符号化(記銘)「方略」という点では、リハーサルが重要である。
リハーサルには、単に復唱するなどの維持リハーサル、情報と知識を関連付けて(例えば、語呂合わせやストーリ化、カテゴリー化などして)覚える精緻化リハーサル、情報をイメージに変換する視覚的リハーサルなどがある。
精緻化は短期的に情報を維持するリハーサルに比べ、処理がより深いものとなる。
クレイクタルビング(1975)は、実験参加者に「はい」か「いいえ」で答えてもらう単語記憶課題(ただし、参加者には記憶実験であることを知らせない偶発的課題)の中で、処理水準として、①形態、②音韻、③カテゴリー化、④意味の4条件を設定した。
結果、再生率は、形態(18%)、音韻(73%)カテゴリー化(93%)、意味(96%)の順で、処理が深くなるほど記憶に残ることがわかった。

さらにロジャースらは、自分自身のことに関連づけて情報を処理した場合に再生率がよくなることを示した。
これは自己参照効果(self-reference effect)と呼ばれるもので、様々な学習場面で「他人事」ではなく、「自分事」として捉えることが大切であることを示しているといえるだろう。

ところで、連続リハーサルよりも間欠リハーサルの方が記憶の定着がよいとされている。
また学習後の睡眠が記憶の定着に重要であることがわかっている。
これは、睡眠中、覚醒時に覚醒時に学習したこととが脳内で再生されること(休息時リプレイ)に関係しているようだ

(2)記憶を測定する

記憶の測定方法には、再生(recall)再認(recognition)によるものがある。
再生課題は、実験参加者が覚えていることを口頭や記述で報告するもので「自由再生」「系列再生」がある。
例えば、短期記憶課題で、15項目程度の単語リストを提示したのち、参加者に自由再生してもらい、結果を系列位置(提示順序)ごとに整理してみると、最初と最後の方の項目に対する成績が良くなる系列位置曲線(初頭効果、親近性効果)が見られる。
これは、系列初期は維持リハーサルによる長期記憶、終盤は短期記憶がそれぞれ関与することが、「干渉効果」でも説明が可能である。 

再認課題は、学習時に覚えた項目(学習刺激)に新しい項目(新奇刺激)を追加して、実験時にそれらをランダム順に1つずつ提示し、学習刺激かどうかを問う「諾否判断型」(yes-no/old-new judgment)と、複数の項目を提示して覚えた項目を選択する「強制選択型」(forced choice)がある。
諾否判断型(二者択一)課題で得られる反応を整理すると、学習刺激に対するイエス(ヒット)とノー(ミス)、新奇刺激に対するイエス(フォーラルアラーム;FA、虚再認)とノー(コレクトリジェクション:CR、正棄却)の4パターンとなる。
正答は学習刺激に対するイエスと新奇刺激に対するノー、すなわちヒットとCRである。
このとき、記憶が鮮明であるほど、ヒット率とFA率の差の比が大きくなる。
実際には、信号検出理論(signal detection theory)に基づいて、弁別力の指標となるディープライム(d’)や反応バイアスを算出し、信号(学習項目)の検出力を検討することになる。

(3)忘却と手がかり:干渉による問題か、検索手がかりの問題か

ドイツの心理学者エビングハウスは、単語として成立しない「無意味綴り」を作成し、それらを覚え、一定時間ごとに節約率(同じ事柄を再び覚えるのに要した時間や回数の短縮率)を記録した。
結果、20分後にが58%、1時間後には44%、1日後には34%、6日後には25%の節約率が徐々に低下していく忘却曲線が示された。
ところで、エビングハウスは、「精神物理学測定法」(「外的な刺激=物理量」に対する「内的な感覚量=心理量」を測定する学問)に影響を受け、この実験法を編み出した。
認知心理学の根幹問題である「意識」を探る試みとして、記憶を数値データで示すことに成功した最初期の実験である。

【減衰説と干渉説】
思い出せないとしたら、それは写真が色褪せるように時間が経つことで記憶が自然に減衰してしまうから(減衰説)なのか、それとも何らかの法介入が記憶を妨げるから(干渉説)なのか。
結論からいえば、いずれも関与している。

減衰説については、日常生活の中で厳密にリハーサルや干渉を統制して、純粋に減衰する情報を追究することは困難である。
しかし、神経レベルで考えると、ある記憶に関するネットワークの一部がすっと活動しなければ、その部分の伝達効率は低下するため、現象的にはそれが再生できない部分となって、自然に減衰したという見方になるだろう。

干渉説は、記憶の書き換えが妨害されるという説である。例えば、記憶課題などで、似たような項目提示が続くと、それが単独呈示のときよりも成績が落ちることが知られている。
そうした干渉効果(interference effct)には、以前の記憶が新しい記憶を妨害す順向性干渉(proactive interference)とその反対の逆向性干渉(retroactive interference)とがある。
それぞれ、順向抑制逆向抑制とも呼ばれる。
先ほどの「系列位置曲線」の結果も干渉説で説明することができる。
つまり、最初の方は逆向性、最後の方は順向性の干渉が強くなる。
そして、中盤は両方の干渉を受けることになる。

【手がかり再生による検証】

ところで、喉まで出かかっているのに思い出せないということがある。
心理学では舌先現象(tip of the tongue phenomenon)という。
タルビングパールストン(1966)は、単語記憶課題の中で、その単語の意味に関連するカテゴリー名を「手がかり」として提示すると、手がかりがないときには再生できなかった単語も再生できることを明らかにした。
この結果は、再生できない=忘却、ではないことを示す。
また、干渉によって再生率が低下した場合でも、学習項目の内容を変化させると、再生率が回復するという。
つまり、干渉によって情報が失われたのではなく、それは検索機能が低下したことで再生できなかった可能性がある。

【文脈手がかりによる検証】

思い出せるかどうかは、符号化と検索時の手がかりが鍵になる。
符号化特殊性原理(encoding specificity principle)によると、情報が符号化される時と検索される時と「文脈一致」が再生率や再認率をたかめる。
これらについて、ゴトンバテリーは、外的文脈である「環境」について検証している。
実験参加者に、水中または陸上で単語リストを学習してもらい、同じ環境または異なる環境で再生テストを実施した。
その結果、符号化とテスト時の場所が同じ場合に再生率が高くなることがわかった。
ただし、同様の条件で再認テストを行うと、その効果は消滅した。
消滅の理由は、再認の場合、選択肢そのものが手がかりとして利用できるため、文脈の一致性は重要でなくなるとしている。

また、内的文脈として「感情」や「気分」の効果が検証されている。
例えば、符号化された時の感情と同じ感情になると思い出しやすいという。
これを感情状態依存と呼ばれる。
また、その時の気分や感情と一致する感情を引き出しやすい気分一致効果(感情一致効果)の現象があることも確認されている。
つまり、高揚しているときはポジティブな情報を、沈んだ気持ちの時は、ネガティブな譲歩にアクセスしやすくなる。
これは、脳内では情動の処理に関わる「扁桃体」が海馬と隣接した位置にあり、両者が密接なネットワークを形成しているゆえである。
符号化の際に生じる情動喚起は、それ自体が記憶に残ると同時に、検索手がかりとして有効だといえる。

【知覚的手がかり(匂い)による検証】

ブルースト現象
この現象が起きている時、脳内ではどの領域が活動しているの不だろうか。
匂い手がかりを用いて過去の出来事を再生してしている時の脳活動を機能的MRI(fMRI)で調べたところ、扁桃体と海馬の活動が活発になることがわかり、匂いと感情、記憶の関連性が示唆された。

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