スタッフブログ
blog

クリティカルに考えるー信じる心、見抜く心ー2

クリティカルに考える―信じる心、見抜く心―2

2.信じる心
(1)日常の思考を検証する

【a.ABO式の血液型性格判断は当たる】
性格や他者のと相性、キャリア適性などをABO式の4つの血液型で見分けられるだろうか。
科学的根拠は今のところない。
ところが、実験で「○○型の人の性格」と題したコメントをそれぞれの血液型の人に配布して「当たっているか」と尋ねると、コメントは全て同じ内容(という仕掛け)にもかかわらず、「当たっている!」と答える人が多いという。
これは、「自分だけ当てはまる」と感じてしまうバーナム効果(barnum effect)と呼ばれる現象である。
「○○占い」などで似たような体験に心当たりのある人もいるのではないだろうか。
クリシンでは、曖昧な情報に対して「そうなんだ!」と受け入れてしまうのではなく、「ちょっと、待てよ?」の姿勢が大事である。
この態度は、特に②情報の分析と③推論で重要である。

【b.少年犯罪はここ10年で増えている】
少年非行に関する世論調査(内閣府、2015)では、少年犯罪が増えていると回答した割合は約8割にのぼる。
実際はどうであろうか。
この点についても、回答の正否を示すことができる「エビデンス」を探してみてほしい。

【c.女性の方が男性よりも感情的になりやすい】
心理学や脳科学などの分野で議論される。
その点で、「領域固有」の問いであり、学術研究を確認してみる必要がありそうだ。
脳の左半球は言語処理、右半球は感情的処理に関わるとされるが、先行研究のなかに、これらの半球をつなぐ脳梁後部の脳梁膨大と呼ばれる部位は、女性の方が男性よりも大きいという報告がある(1982)。
これにより、左右半球間で精密に情報がやりとりされるであろう女性の方が感情を意識的に言語化できると推定されたようだ。
しかし、脳梁の体積を調べた研究結果は性差に関して一貫しておらず、脳の構造に明確な性差は認められない(2017)
機能という点でも感情を司る扁桃体の活動に顕著な性差は見出されていないという。
澤田・佐藤(2016)は、いわゆる「女性は感情的」「男と女は脳が違う」といった男女を二分するような言明は、ある種の「神話」であり、それは科学的検証の中で「差がある」という点が極端に強調されて生じた可能性があることを指摘している。

(2)信じる心の背景ー神話が誕生する理由ー

私たちは、どうやらクリシンしているつもりでもできていないことがあるようだ。
良く確かめもせずに、でも自分では確かなことだと信じてしまうのはなぜだろうか。
そこには情報処理システムにおいて共通する要因が影響しているようだ。
信じてしまう要因とは、
①その現象や情報が「専門家」と呼ばれる人によって解説されていた
②写真や文書、数字などの「データ」が証拠として提示されていた
③テレビやインターネット、新聞、書籍などのマスメディアによって、多くの人にその事象が「認知」されていた
信じてしまう要因を眺めてみると、クリシンの実行プロセスの中でも、特に③推論に鍵があるようだ。

(3)推論とスキーマ

推論とは、既存の事柄をもとに未知の事柄を引き出すことである。
何かを推論するとき、長期記憶に貯蔵されている脳内の知識にアクセスするが、その知識はバラバラではなく概念ごとにまとまり=カテゴリーを持ち、相互に関連するネットワークで表現されているという。
この脳内表現は、スキーマ(schema)と呼ばれる。
自分に関するスキーマ、「自己スキーマ」
この中で関連の強い概念同士は互いにアクセスしやすく(脳内の神経レベルでは結合が強く)、顕著に意識にのぼると考えられる。
スキーマは個々人の経験に基づくもので、時に記憶の変容や偽りの記憶であるフォールスメモリ(FM)を生んでしまうことがある。

【スキーマとFMの関係】
実際に、スキーマFMの関係は、DRMパラダイム(Deese-Roeding=McDermtt paradigm)の実験で検証することができる。
情報を符号化(記銘)する際、学習単語が提示される度に、関連する単語が、脳内で何度も間接的にアクセスされる(神経が活性化する)ことになり、リストに「あった」ものとして記憶に貯蔵され、その結果、FM率が高くなると考えられる。
【スキーマの機能的特徴】
①一致する情報に注意を向ける
②一致しない情報を受け入れない
③一致する情報の記憶が促進される
④一致するように記憶を歪ませる

【日常行動とスキーマの関係】
「職業スキーマ」の中の「機長スキーマ」が活性化し、そこで男性の方が女性よりも強いリンクを持っていたからだと推測される。
こうした強いリンクは時に認知的バイアス(cognitive bias)を生むことがある。
今回の例もジェンダーに関するバイアスが生じたといえる。
さらに、偏った概念が他者や集団に強く結びついてしまった場合、それは偏見や先入観となりステレオタイプ(stereo type)を形成してしまう危険性がある。

【スキーマとクリシンの関係】
クリシンの実行プロセスにある「推論」は、スキーマと密接に関わっていることがわかった。
スキーマの特徴を振り返ると、長所としては、スキーマが存在することで、膨大で多岐にわたる情報の中から必要な情報を選択し、目の前の対象を「意味づける」という一連の情報処理が効率よく進む点にある。
実用的推論スキーマなどもその一例である。
一方、短所は、効率と引き換えに、ステレオタイプ的な認知を生んでしまったり、さらに情報を鵜呑みにするなどのノンクリティカルな推論を招いてしまったりすることである。
スキーマクリシンを支える「知識」の中にあるが、意味記憶に関する脳内のネットワーク表現が「辞書」に近いのに対して、スキーマは個々人の経験による影響が強く「事典」に近いといえるだろう。
そうしたスキーマがその個人の思考の「クセ」になって定着してしまうと、自分ではそのクセに気づきにくい。
思考の悪循環に陥る可能性がある。
「メタ認知」を意識して発動させる必要があるが、「言うは易く行うは難し」である。

お問い合わせはお気軽に!

ご不明・ご不安な点など、
何でもお気軽にお問い合わせください。

TEL: 093-981-0244 093-981-0244
営業時間: 10:00~19:00 不定休(カレンダー参照)