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認知と発達ー推論する心、共感する心ー2

認知と発達―推論する心、共感する心―2

(2)乳児はサルの顔を見分けられる

パスカリスら(2002)は、馴化脱馴化法を用いて、乳児がヒト同士あるいはさる同士の顔の違いを弁別できるか、それぞれの顔写真を使って調べた。
参加者は、生後6か月児、生後9か月児、成人の3群であった。
実験の結果、6か月児では、ヒトとサルの両方の実験系列で、それぞれの顔を分別することができた。
一方、9か月児と成人はヒトの顔であれば弁別できたが、サルの顔はほとんど弁別できなかった。
実験者は、この結果について、生後9カ月までに接触頻度の高い情報(この場合、ヒトの顔)に対して識別感度が高くなる知覚的狭窄(perceptual narrowing)が生じたためであるとしている。
同様の現象は、音声弁別の実験でも検証されている。
例えば、日本人の大人でも聞き分け難いとされる英語の「R」と「L」の発音を新生児は聞き分けることができた。
しかし、そうした外国語に対する音声識別も、母国語が発達する一方で、生後1年頃にはできなくなることが報告されている(2006)。

(3)知覚の熟達化と発達的戦略

改めて、知覚的狭窄が生じるメカニズムについて、そこには、人間のような複雑な知覚・認知のしくみを展開していくための「発達的戦略」が取られているようだ。
つまり、母語の獲得や同じ種の顔識別などに特化した機能の情報処理を習熟させていく一方で、脳内ではシナプス刈り込みによって、接触頻度の低い不要な情報ネットワークを削除し、そこに新たな機能を展開するための「余地」を残しておく。
さらにいえば、刈り込みによってボトムアップ処理の効率化が進み、トップダウン処理を展開する余地が出てくる。
すなわち、トップダウン処理を発達させる戦略が早くから始まっていると考えられる。
情報処理の観点からすると、知覚的狭窄「知覚の熟達化」と同義に解釈できる
脳にはおのずと「熟達化」「効率化」を促す情報処理の発達的戦略が備わっているようだ。

(4)新奇刺激の検出と脳の関係
(5)生後初期のクロスモーダル可塑性

新生児は、刺激の入力経路を触覚から視覚に変更しても(見ずに触ったものを視覚的に提示しても)、一致する対象物を選択することができる。
これは、異なる知覚情報を対応づける感覚様相マッチング(cross-modal matching)が生後間もない時期にすでに成立していることを示す。
感覚間の転移や統合された感覚が存在することからも、仮説として、新生児の感覚は未分化であり、共感覚(synesthesia)の状態にある可能性が指摘されている。
また,視覚や聴覚の先天的な障害によって、その感覚情報を処理する脳部位(一次的視覚野などの感覚野)に入力がない場合も、その脳部位が別のサポートをすることが知られている。
例えば、視覚障害がある人が点字を読んだり音声で言語を聞いたりすると、視覚野も活動する。
聴覚障害がある人の場合も同様に、視覚情報に対して聴覚野の活動が見られる。
これは、クロスモーダル可塑性(cross-modal plasitcity)と呼ばれる(2002)。

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